新改訳新約聖書 1965
使徒の働き 19
1 アポロがコリントにいた間に、パウロは奥地を通ってエペソに来た。そして幾人か
の弟子に出会って、
2 「信じたとき、聖霊を受けましたか。」と尋ねると、彼らは、「いいえ、聖霊の与え られることは、聞きもしませんでした。」と答えた。
3 「では、どんなバプテスマを受けたのですか。」と言うと、「ヨハネのバプテスマで す。」と答えた。
4 そこで、パウロは、「ヨハネは、自分のあとに来られるイエスを信じるように人々 に告げて、悔い改めのバプテスマを授けたのです。」と言った。
5 これを聞いたその人々は、主イエスの御名によってバプテスマを受けた。
6 パウロが彼らの上に手を置いたとき、聖霊が彼らに臨まれ、彼らは異言を語ったり、 預言をしたりした。
7 その人々は、みなで十二人ほどであった。
8 それから、パウロは会堂にはいって、三か月の間大胆に語り、神の国について論じ て、彼らを説得しようと努めた。
9 しかし、ある者たちが心をかたくなにして聞き入れず、会衆の前で、この道をののし ったので、パウロは彼らから身を引き、弟子たちをも退かせて、毎日ツラノの講堂で論じ た。
10 これが二年の間続いたので、アジヤに住む者はみな、ユダヤ人もギリシヤ人も主のこ とばを聞いた。
11 神はパウロの手によって驚くべき奇蹟を行なわれた。
12 パウロの身に着けている手ぬぐいや前掛けをはずして病人に当てると、その病 気は去り、悪霊は出て行った。
13 ところが、諸国を巡回しているユダヤ人の魔よけ祈祷師の中のある者たちも、ためし に、悪霊につかれている者に向かって主イエスの御名をとなえ、「パウロの宣べ伝えてい るイエスによって、おまえたちに命じる。」と言ってみた。
14 そういうことをしたのは、ユダヤの祭司長スケワという人の七人の息子たちであっ た。
15 すると悪霊が答えて、「自分はイエスを知っているし、パウロもよく知っている。け れどおまえたちは何者だ。」と言った。
16 そして悪霊につかれている人は、彼らに飛びかかり、ふたりの者を押えつけて、みな を打ち負かしたので、彼らは裸にされ、傷を負ってその家を逃げ出した。
17 このことがエペソに住むユダヤ人とギリシヤ人の全部に知れ渡ったので、みな恐れ を感じて、主イエスの御名をあがめるようになった。
18 そして、信仰にはいった人たちの中から多くの者がやって来て、自分たちのしている ことをさらけ出して告白した。
19 また魔術を行なっていた多くの者が、その書物をかかえて来て、みなの前で焼き捨て た。その値段を合計してみると、銀貨五万枚になった。
20 こうして、主のことばは驚くほど広まり、ますます力強くなって行った。
21 これらのことが一段落すると、パウロは御霊の示しにより、マケドニヤとアカヤ を通ったあとでエルサレムに行くことにした。そして、「私はそこに行ってから、ローマ も見なければならない。」と言った。
22 そこで、自分に仕えている者の中からテモテとエラストのふたりをマケドニヤ に送り出したが、パウロ自身は、なおしばらくアジヤにとどまっていた。
23 そのころ、この道のことから、ただならぬ騒動が持ち上がった。
24 それというのは、デメテリオという銀細工人がいて、銀でアルテミス神殿の模
型を作り、職人たちにかなりの収入を得させていたが、
25 彼が、その職人たちや、同業の者たちをも集めて、こう言ったからである。「皆さ ん。ご承知のように、私たちが繁盛しているのは、この仕事のおかげです。
26 ところが、皆さんが見てもいるし聞いてもいるように、あのパウロが、手で作っ た物など神ではないと言って、エペソばかりか、ほとんどアジヤ全体にわたって、大ぜい の人々を説き伏せ、迷わせているのです。
27 これでは、私たちのこの仕事も信用を失う危険があるばかりか、大女神アルテミス の神殿も顧みられなくなり、全アジヤ、全世界の拝むこの大女神のご威光も地に落ちてし まいそうです。」
28 そう聞いて、彼らは大いに怒り、「偉大なのはエペソ人のアルテミス だ。」と叫び始めた。
29 そして、町中が大騒ぎになり、人々はパウロの同行者であるマケドニヤ人ガイオとア リスタルコを捕え、一団となって劇場へなだれ込んだ。
30 パウロは、その集団の中にはいって行こうとしたが、弟子たちがそうさせなかった。
31 アジヤ州の高官で、パウロの友人である人たちも、彼に使いを送って、劇場にはいら ないように頼んだ。
32 ところで、集会は混乱状態に陥り、大多数の者は、なぜ集まったのかさえ知らなかっ たので、ある者はこのことを叫び、ほかの者は別のことを叫んでいた。
33 ユダヤ人たちがアレキサンデルという者を前に押し出したので、群衆の中のある人た ちが彼を促すと、彼は手を振って、会衆に弁明しようとした。
34 しかし、彼がユダヤ人だとわかると、みなの者がいっせいに声をあげ、「偉大なのは エペソ人のアルテミスだ。」と二時間ばかりも叫び続けた。
35 町の書記役は、群衆を押し静めてこう言った。「エペソの皆さん。エペソの町が、大 女神アルテミスと天から下ったそのご神体との守護者であることを知らない者が、いった いいるでしょうか。
36 これは否定できない事実ですから、皆さんは静かにして、軽はずみなことをしないよ うにしなければいけません。
37 皆さんがここに引き連れて来たこの人たちは、宮を汚した者でもなく、私たちの女 神をそしった者でもないのです。
38 それで、もしデメテリオとその仲間の職人たちが、だれかに文句があるのなら、裁 判の日があるし、地方総督たちもいることですから、互いに訴え出たらよいのです。
39 もしあなたがたに、これ以上何か要求することがあるなら、正式の議会で決めてもら わなければいけません。
40 きょうの事件については、正当な理由がないのですから、騒擾罪に問われる恐れがあ ります。その点に関しては、私たちはこの騒動の弁護はできません。」
41 こう言って、その集まりを解散させた。