新改訳新約聖書 1965
ヨハネの福音書 19
1 そこで、ピラトはイエスを捕えて、むち打ちにした。
2 また、兵士たちは、いばらで冠を編んで、イエスの頭にかぶらせ、紫色の着物を着せ た。
3 彼らは、イエスに近寄っては、「ユダヤ人の王さま。ばんざい。」と言い、またイエ スの顔を平手で打った。
4 ピラトは、もう一度外に出て来て、彼らに言った。「よく聞きなさい。あなたがたの ところにあの人を連れ出して来ます。あの人に何の罪も見られないということを、あなた がたに知らせるためです。」
5 それでイエスは、いばらの冠と紫色の着物を着けて、出て来られた。するとピラト は彼らに「さあ、この人です。」と言った。
6 祭司長たちや役人たちはイエスを見ると、激しく叫んで、「十字架につけろ。十字 架につけろ。」と言った。ピラトは彼らに言った。「あなたがたがこの人を引き取り、十 字架につけなさい。私はこの人には罪を認めません。」
7 ユダヤ人たちは彼に答えた。「私たちには律法があります。この人は自分を神の子と したのですから、律法によれば、死に当たります。」
8 ピラトは、このことばを聞くと、ますます恐れた。
9 そして、また官邸にはいって、イエスに言った。「あなたはどこの人ですか。」しか し、イエスは彼に何の答えもされなかった。
10 そこで、ピラトはイエスに言った。「あなたは私に話さないのですか。私にはあなた を釈放する権威があり、また十字架につける権威があることを、知らないのですか。」
11 イエスは答えられた。「もしそれが上から与えられているのでなかったら、あなたに はわたしに対して何の権威もありません。ですから、わたしをあなたに渡した者に、もっ と大きい罪があるのです。」
12 こういうわけで、ピラトはイエスを釈放しようと努力した。しかし、ユダヤ人たち は激しく叫んで言った。「もしこの人を釈放するなら、あなたはカイザルの味方ではあり ません。自分を王だとする者はすべて、カイザルにそむくのです。」
13 そこでピラトは、これらのことばを聞いたとき、イエスを外に引き出し、敷石(ヘブ ル語ではガバタ)と呼ばれる場所で、裁判の席に着いた。
14 その日は過越の備え日で、時は六時ごろであった。ピラトはユダヤ人たちに言った。 「さあ、あなたがたの王です。」
15 彼らは激しく叫んだ。「除け。除け。十字架につけろ。」ピラトは彼らに言った。 「あなたがたの王を私が十字架につけるのですか。」祭司長たちは答えた。「カイザルの ほかには、私たちに王はありません。」
16 そこでピラトは、そのとき、イエスを、十字架につけるため彼らに引き渡した。
17 彼らはイエスを受け取った。そして、イエスはご自分で十字架を負って、「どくろ の地」という場所(ヘブル語でゴルゴタと言われる)に出て行かれた。
18 彼らはそこでイエスを十字架につけた。イエスといっしょに、ほかのふたりの者をそ れぞれ両側に、イエスを真中にしてであった。
19 ピラトは罪状書きも書いて、十字架の上に掲げた。それには「ユダヤ人の王ナザ レ人イエス。」と書いてあった。
20 それで、大ぜいのユダヤ人がこの罪状書きを読んだ。イエスが十字架につけられた場 所は都に近かったからである。またそれはヘブル語、ラテン語、ギリシヤ語で書いてあっ た。
21 そこで、ユダヤ人の祭司長たちがピラトに、「ユダヤ人の王、と書かないで、彼はユ ダヤ人の王と自称した、と書いてください。」と言った。
22 ピラトは答えた。「私の書いたことは私が書いたのです。」
23 さて、兵士たちは、イエスを十字架につけると、イエスの着物を取り、ひとりの兵 士に一つずつあたるよう四分した。また下着をも取ったが、それは上から全部一つに織っ た、縫い目なしのものであった。
24 そこで彼らは互いに言った。「それは裂かないで、だれの物になるか、くじを引こ う。」それは、「彼らはわたしの着物を分け合い、わたしの下着のためにくじを引い た。」という聖書が成就するためであった。
25 兵士たちはこのようなことをしたが、イエスの十字架のそばには、イエス の母と母の姉妹と、クロパの妻のマリヤとマグダラのマリヤが立っていた。
26 イエスは、母と、そばに立っている愛する弟子とを見て、母に「女の方。そこに、あ なたの息子がいます。」と言われた。
27 それからその弟子に「そこに、あなたの母がいます。」と言われた。その時から、こ の弟子は彼女を自分の家に引き取った。
28 この後、イエスは、すべてのことが完了したのを知って、聖書が成就するために、 「わたしは渇く。」と言われた。
29 そこには酸いぶどう酒のいっぱいはいった入れ物が置いてあった。そこで彼らは、 酸いぶどう酒を含んだ海綿をヒソプの枝につけて、それをイエスの口もとに差し出した。
30 イエスは、酸いぶどう酒を受けられると、「完了した。」と言われた。そして、頭を たれて、霊をお渡しになった。
31 その日は備え日であったため、ユダヤ人たちは安息日に(その安息日は大いなる日で あったので)、死体を十字架の上に残しておかないように、すねを折ってそれを取りのけ る処置をピラトに願った。
32 それで、兵士たちが来て、イエスといっしょに十字架につけられた第一の者と、もう ひとりの者とのすねを折った。
33 しかし、イエスのところに来ると、イエスがすでに死んでおられるのを認めたの で、そのすねを折らなかった。
34 しかし、兵士のうちのひとりがイエスのわき腹を槍で突き刺した。すると、ただち に血と水が出て来た。
35 それを目撃した者があかしをしているのである。そのあかしは真実である。そ の人が、あなたがたにも信じさせるために、真実を話すということをよく知っているので ある。
36 この事が起こったのは、「彼の骨は一つも砕かれない。」という聖書のことばが成 就するためであった。
37 また聖書の別のところには、「彼らは自分たちが突き刺した方を見る。」と言われて いるからである。
38 そのあとで、イエスの弟子ではあったがユダヤ人を恐れてそのことを隠していたアリ マタヤのヨセフが、イエスのからだを取りかたづけたいとピラトに願った。それで、ピラ トは許可を与えた。そこで彼は来て、イエスのからだを取り降ろした。
39 前に、夜イエスのところに来たニコデモも、没薬とアロエを混ぜ合わせたものをおよ そ三十キログラムばかり持って、やって来た。
40 そこで、彼らはイエスのからだを取り、ユダヤ人の埋葬の習慣に従って、それを香 料といっしょに亜麻布で巻いた。
41 イエスが十字架につけられた場所に園があって、そこには、まだだれも葬られたこと のない新しい墓があった。
42 その日がユダヤ人の備え日であったため、墓が近かったので、彼らはイエスをそこ に納めた。