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新改訳新約聖書 1965

ルカの福音書 1

1 そのころ、全世界の住民登録をせよという勅令が、皇帝アウグストから出た。

2 これは、クレニオがシリヤの総督であったときの最初の住民登録であった。

3 それで、人々はみな、登録のために、それぞれ自分の町に向かって行った。

4 ヨセフもガリラヤの町ナザレから、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上っ

て行った。彼は、ダビデの家系であり血筋でもあったので、

5 身重になっているいいなずけの妻マリヤもいっしょに登録するためであった。

6 ところが、彼らがそこにいる間に、マリヤは月が満ちて、

7 男子の初子を産んだ。それで、布にくるんで、飼葉おけに寝かせた。宿屋には彼らの いる場所がなかったからである。

8 さて、この土地に、羊飼いたちが、野宿で夜番をしながら羊の群れを見守っていた。

9 すると、主の使いが彼らのところに来て、主の栄光が回りを照らしたので、彼らはひ どく恐れた。

10 御使いは彼らに言った。「恐れることはありません。今、私はこの民全体のためのす ばらしい喜びを知らせに来たのです。

11 きょうダビデの町で、あなたがたのために、救い主がお生まれになりました。こ の方こそ主キリストです。

12 あなたがたは、布にくるまって飼葉おけに寝ておられるみどりごを見つけます。これ が、あなたがたのためのしるしです。」

13 すると、たちまち、その御使いといっしょに、多くの天の軍勢が現われて、神を賛 美して言った。

14 「いと高き所に、栄光が、神にあるように。

地の上に、平和が、 御心にかなう人々にあるように。」

15 御使いたちが彼らを離れて天に帰ったとき、羊飼いたちは互いに話し合った。「さ あ、ベツレヘムに行って、主が私たちに知らせてくださったこの出来事を見て来よ う。」

16 そして急いで行って、マリヤとヨセフと、飼葉おけに寝ておられるみどりごと を捜し当てた。

17 それを見たとき、羊飼いたちは、この幼子について告げられたことを知らせた。

18 それを聞いた人たちはみな、羊飼いの話したことに驚いた。

19 しかしマリヤは、これらのことをすべて心に納めて、思いを巡らしていた。

20 羊飼いたちは、見聞きしたことが、全部御使いの話のとおりだったので、神をあが め、賛美しながら帰って行った。

21 八日が満ちて幼子に割礼を施す日となり、幼子はイエスという名で呼ばれることにな った。胎内に宿る前に御使いがつけた名である。

22 さて、モーセの律法による彼らのきよめの期間が満ちたとき、両親は幼子を主にささ げるために、エルサレムへ連れて行った。

23 ――それは、主の律法に「母の胎を開く男子の初子は、すべて、主に聖別された者、

と呼ばれなければならない。」と書いてあるとおりであった。――

24 また、主の律法に「山ばと一つがい、または、家ばとのひな二羽。」と定められたと ころに従って犠牲をささげるためであった。

25 そのとき、エルサレムにシメオンという人がいた。この人は正しい、敬虔な人で、イ スラエルの慰められることを待ち望んでいた。聖霊が彼の上にとどまっておられた。

26 また、主のキリストを見るまでは、決して死なないと、聖霊のお告げを受けていた。

27 彼が御霊に感じて宮にはいると、幼子イエスを連れた両親が、その子のために律 法の慣習を守るために、はいって来た。

28 すると、シメオンは幼子を腕に抱き、神をほめたたえて言った。

29 「主よ。今こそあなたは、あなたのしもべを、 みことばどおり、安らかに去らせてくださいます。

30 私の目があなたの御救いを見たからです。

31 御救いはあなたが

万民の前に備えられたもので、

32 異邦人を照らす啓示の光、 御民イスラエルの光栄です。」

33 父と母は、幼子についていろいろ語られる事に驚いた。

34 また、シメオンは両親を祝福し、母マリヤに言った。「ご覧なさい。この子は、イス ラエルの多くの人が倒れ、また、立ち上がるために定められ、また、反対を受けるしるし として定められています。

35 剣があなたの心さえも刺し貫くでしょう。それは多くの人の心の思いが現われるため です。」

36 また、アセル族のパヌエルの娘で女預言者のアンナという人がいた。この人は非

常に年をとっていた。処女の時代のあと七年間、夫とともに住み、

37 その後やもめになり、八十四歳になっていた。そして宮を離れず、夜も昼も、断 食と祈りをもって神に仕えていた。

38 ちょうどこのとき、彼女もそこにいて、神に感謝をささげ、そして、エルサレム の贖いを待ち望んでいるすべての人々に、この幼子のことを語った。

39 さて、彼らは主の律法による定めをすべて果たしたので、ガリラヤの自分たちの町ナ ザレに帰った。

40 幼子は成長し、強くなり、知恵に満ちて行った。神の恵みがその上にあった。

41 さて、イエスの両親は、過越の祭りには毎年エルサレムに行った。

42 イエスが十二歳になられたときも、両親は祭りの慣習に従って都へ上り、

43 祭りの期間を過ごしてから、帰路についたが、少年イエスはエルサレムにとどまって おられた。両親はそれに気づかなかった。

44 イエスが一行の中にいるものと思って、一日の道のりを行った。それから、親族や知

人の中を捜し回ったが、

45 見つからなかったので、イエスを捜しながら、エルサレムまで引き返した。

46 そしてようやく三日の後に、イエスが宮で教師たちの真中にすわって、話を聞いた り質問したりしておられるのを見つけた。

47 聞いていた人々はみな、イエスの知恵と答えに驚いていた。

48 両親は彼を見て驚き、母は言った。「まあ、あなたはなぜ私たちにこんなことをした のです。見なさい。父上も私も、心配してあなたを捜し回っていたのです。」

49 するとイエスは両親に言われた。「どうしてわたしをお捜しになったのですか。わた しが必ず自分の父の家にいることを、ご存じなかったのですか。」

50 しかし両親には、イエスの話されたことばの意味がわからなかった。

51 それからイエスは、いっしょに下って行かれ、ナザレに帰って、両親に仕えられた。 母はこれらのことをみな、心に留めておいた。

52 イエスはますます知恵が進み、背たけも大きくなり、神と人とに愛された。

1 皇帝テベリオの治世の第十五年、ポンテオ・ピラトがユダヤの総督、ヘロデがガリラ ヤの国主、その兄弟ピリポがイツリヤとテラコニテ地方の国主、ルサニヤがアビレネの国

主であり、

2 アンナスとカヤパが大祭司であったころ、神のことばが、荒野でザカリヤの子ヨハネ に下った。

3 そこでヨハネは、ヨルダン川のほとりのすべての地方に行って、罪が赦されるため の悔い改めに基づくバプテスマを説いた。

4 そのことは預言者イザヤのことばの書に書いてあるとおりである。 「荒野で叫ぶ者の声がする。

『主の道を用意し、 主の通られる道をまっすぐにせよ。

5 すべての谷はうずめられ、

すべての山と丘とは低くされ、

曲がった所はまっすぐになり、 でこぼこ道は平らになる。

6 こうして、あらゆる人が、 神の救いを見るようになる。』」

7 それで、ヨハネは、彼からバプテスマを受けようとして出て来た群衆に言った。「ま むしのすえたち。だれが必ず来る御怒りをのがれるように教えたのか。

8 それならそれで、悔い改めにふさわしい実を結びなさい。『われわれの先祖はアブラ ハムだ。』などと心の中で言い始めてはいけません。よく言っておくが、神は、こん な石ころからでも、アブラハムの子孫を起こすことがおできになるのです。

9 斧もすでに木の根元に置かれています。だから、良い実を結ばない木は、み な切り倒されて、火に投げ込まれます。」

10 群衆はヨハネに尋ねた。「それでは、私たちはどうすればよいのでしょう。」

11 彼は答えて言った。「下着を二枚持っている者は、一つも持たない者に分けなさい。 食べ物を持っている者も、そうしなさい。」

12 取税人たちも、バプテスマを受けに出て来て、言った。「先生。私たちはどうすれば よいのでしょう。」

13 ヨハネは彼らに言った。「決められたもの以上には、何も取り立ててはいけませ ん。」

14 兵士たちも、彼に尋ねて言った。「私たちはどうすればよいのでしょうか。」ヨハネ は言った。「だれからも、力ずくで金をゆすったり、無実の者を責めたりしてはいけませ ん。自分の給料で満足しなさい。」

15 民衆は救い主を待ち望んでおり、みな心の中で、ヨハネについて、もしかするとこ

の方がキリストではあるまいか、と考えていたので、

16 ヨハネはみなに答えて言った。「私は水であなたがたにバプテスマを授けていま す。しかし、私よりもさらに力のある方がおいでになります。私などは、その方のくつの ひもを解く値うちもありません。その方は、あなたがたに聖霊と火とのバプテスマを お授けになります。

17 また手に箕を持って脱穀場をことごとくきよめ、麦を倉に納め、殻を消えな い火で焼き尽くされます。」

18 ヨハネは、そのほかにも多くのことを教えて、民衆に福音を知らせた。

19 さて国主ヘロデは、その兄弟の妻ヘロデヤのことについて、また、自分の行なった悪

事のすべてを、ヨハネに責められたので、

20 ヨハネを牢に閉じ込め、すべての悪事にもう一つこの悪事を加えた。

21 さて、民衆がみなバプテスマを受けていたころ、イエスもバプテスマをお受けにな

り、そして祈っておられると、天が開け、

22 聖霊が、鳩のような形をして、自分の上に下られるのをご覧になった。また、天か ら声がした。「あなたは、わたしの愛する子、わたしはあなたを喜ぶ。」

23 教えを始められたとき、イエスはおよそ三十歳で、人々からヨセフの子と思われてい

た。このヨセフは、ヘリの子、順次さかのぼって、

24 マタテの子、レビの子、メルキの子、ヤンナイの子、ヨセフの子、

25 マタテヤの子、アモスの子、ナホムの子、エスリの子、ナンガイの子、

26 マハテの子、マタテヤの子、シメイの子、ヨセクの子、ヨダの子、

27 ヨハナンの子、レサの子、ゾロバベルの子、サラテルの子、ネリの子、

28 メルキの子、アデイの子、コサムの子、エルマダムの子、エルの子、

29 ヨシュアの子、エリエゼルの子、ヨリムの子、マタテの子、レビの子、

30 シメオンの子、ユダの子、ヨセフの子、ヨナムの子、エリヤキムの子、

31 メレヤの子、メナの子、マタタの子、ナタンの子、ダビデの子、

32 エッサイの子、オベデの子、ボアズの子、サラの子、ナアソンの子、

33 アミナダブの子、アデミンの子、アルニの子、エスロンの子、パレスの子、ユダ

の子、

34 ヤコブの子、イサクの子、アブラハムの子、テラの子、ナホルの子、

35 セルグの子、レウの子、ペレグの子、エベルの子、サラの子、

36 カイナンの子、アルパクサデの子、セムの子、ノアの子、ラメクの子、

37 メトセラの子、エノクの子、ヤレデの子、マハラレルの子、カイナンの子、

38 エノスの子、セツの子、アダムの子、このアダムは神の子である。

1 さて、聖霊に満ちたイエスは、ヨルダンから帰られた。そして御霊に導かれて荒野に

おり、

2 四十日間、悪魔の試みに会われた。その間何も食べず、その時が終わると、空 腹を覚えられた。

3 そこで、悪魔はイエスに言った。「あなたが神の子なら、この石に、パンになれ と言いつけなさい。」

4 イエスは答えられた。「『人はパンだけで生きるのではない。』と書いてある。」

5 また、悪魔はイエスを連れて行き、またたくまに世界の国々を全部見せて、

6 こう言った。「この、国々のいっさいの権力と栄光とをあなたに差し上げましょ う。それは私に任されているので、私がこれと思う人に差し上げるのです。

7 ですから、もしあなたが私を拝むなら、すべてをあなたのものとしましょう。」

8 イエスは答えて言われた。「『あなたの神である主を拝み、主にだけ仕えなさ い。』と書いてある。」

9 また、悪魔はイエスをエルサレムに連れて行き、神殿の頂に立たせて、こう言った。 「あなたが神の子なら、ここから飛び降りなさい。

10 『神は、御使いたちに命じてあなたを守らせる。』とも、

11 『あなたの足が石に打ち当たることのないように、彼らの手で、あなたをささえさせ る。』とも書いてあるからです。」

12 するとイエスは答えて言われた。「『あなたの神である主を試みてはならな い。』と言われている。」

13 誘惑の手を尽くしたあとで、悪魔はしばらくの間イエスから離れた。

14 イエスは御霊の力を帯びてガリラヤに帰られた。すると、その評判が回り一帯に、く まなく広まった。

15 イエスは、彼らの会堂で教え、みなの人にあがめられた。

16 それから、イエスはご自分の育ったナザレに行き、いつものとおり安息日に会堂には いり、朗読しようとして立たれた。

17 すると、預言者イザヤの書が手渡されたので、その書を開いて、こう書いてあ る所を見つけられた。

18 「わたしの上に主の御霊がおられる。

主が、貧しい人々に福音を伝えるようにと、 わたしに油を注がれたのだから。 主はわたしを遣わされた。

捕われ人には赦免を、 盲人には目の開かれることを告げるために。

しいたげられている人々を自由にし、

19 主の恵みの年を告げ知らせるために。」

20 イエスは書を巻き、係りの者に渡してすわられた。会堂にいるみなの目がイエス に注がれた。

21 イエスは人々にこう言って話し始められた。「きょう、聖書のこのみことばが、あな たがたが聞いたとおり実現しました。」

22 みなイエスをほめ、その口から出て来る恵みのことばに驚いた。そしてまた、「こ の人は、ヨセフの子ではないか。」と彼らは言った。

23 イエスは言われた。「きっとあなたがたは、『医者よ。自分を直せ。』というたとえ を引いて、カペナウムで行なわれたと聞いていることを、あなたの郷里のここでもしてく れ、と言うでしょう。」

24 また、こう言われた。「まことに、あなたがたに告げます。預言者はだれでも、自 分の郷里では歓迎されません。

25 わたしが言うのは真実のことです。エリヤの時代に、三年六か月の間天が閉じて、全

国に大ききんが起こったとき、イスラエルにもやもめは多くいたが、

26 エリヤはだれのところにも遣わされず、シドンのサレプタにいたやもめ女にだけ遣わ されたのです。

27 また、預言者エリシャのときに、イスラエルには、らい病人がたくさんいたが、その うちのだれもきよめられないで、シリヤ人ナアマンだけがきよめられました。」

28 これらのことを聞くと、会堂にいた人たちはみな、ひどく怒り、

29 立ち上がってイエスを町の外に追い出し、町が立っていた丘のがけのふちまで連れ て行き、そこから投げ落とそうとした。

30 しかしイエスは、彼らの真中を通り抜けて、行ってしまわれた。

31 それからイエスは、ガリラヤの町カペナウムに下られた。そして、安息日ごとに、 人々を教えられた。

32 人々は、その教えに驚いた。そのことばに権威があったからである。

33 また、会堂に、汚れた悪霊につかれた人がいて、大声でわめいた。

34 「ああ、ナザレ人のイエス。いったい私たちに何をしようというのです。あなた は私たちを滅ぼしに来たのでしょう。私はあなたがどなたか知っています。神の聖者で す。」

35 イエスは彼をしかって、「黙れ。その人から出て行け。」と言われた。するとその悪 霊は人々の真中で、その人を投げ倒して出て行ったが、その人は別に何の害も受けなかっ た。

36 人々はみな驚いて、互いに話し合った。「今のおことばはどうだ。権威と力とで お命じになったので、汚れた霊でも出て行ったのだ。」

37 こうしてイエスのうわさは、回りの地方の至る所に広まった。

38 イエスは立ち上がって会堂を出て、シモンの家にはいられた。すると、シモンのしゅ うとめが、ひどい熱で苦しんでいた。人々は彼女のためにイエスにお願いした。

39 イエスがその枕もとに来て、熱をしかりつけられると、熱がひき、彼女はすぐ に立ち上がって彼らをもてなし始めた。

40 日が暮れると、いろいろな病気で弱っている者をかかえた人たちがみな、その病人を みもとに連れて来た。イエスは、ひとりひとりに手を置いて、いやされた。

41 また、悪霊どもも、「あなたこそ神の子です。」と大声で叫びながら、多くの人か ら出て行った。イエスは、悪霊どもをしかって、ものを言うのをお許しにならなかった。 彼らはイエスがキリストであることを知っていたからである。

42 朝になって、イエスは寂しい所に出て行かれた。群衆は、イエスを捜し回って、みも とに来ると、イエスが自分たちから離れて行かないよう引き止めておこうとした。

43 しかしイエスは、彼らにこう言われた。「ほかの町々にも、どうしても神の国の福 音を宣べ伝えなければなりません。わたしは、そのために遣わされたのですから。」

44 そしてユダヤの諸会堂で、福音を告げ知らせておられた。

1 群衆がイエスに押し迫るようにして神のことばを聞いたとき、イエスはゲネサ

レ湖の岸べに立っておられたが、

2 岸べに小舟が二そうあるのをご覧になった。漁師たちは、その舟から降りて網を洗っ ていた。

3 イエスは、そのうちの一つの、シモンの持ち舟に乗り、陸から少し漕ぎ出すよう に頼まれた。そしてイエスはすわって、舟から群衆を教えられた。

4 話が終わると、シモンに、「深みに漕ぎ出して、網をおろして魚をとりなさ い。」と言われた。

5 するとシモンが答えて言った。「先生。私たちは、夜通し働きましたが、何一つとれ ませんでした。でもおことばどおり、網をおろしてみましょう。」

6 そして、そのとおりにすると、たくさんの魚がはいり、網は破れそうになった。

7 そこで別の舟にいた仲間の者たちに合図をして、助けに来てくれるように頼んだ。 彼らがやって来て、そして魚を両方の舟いっぱいに上げたところ、二そうとも沈みそうに なった。

8 これを見たシモン・ペテロは、イエスの足もとにひれ伏して、「主よ。私のよう な者から離れてください。私は、罪深い人間ですから。」と言った。

9 それは、大漁のため、彼もいっしょにいたみなの者も、ひどく驚いたからである。

10 シモンの仲間であったゼベダイの子ヤコブやヨハネも同じであった。イエスはシモン にこう言われた。「こわがらなくてもよい。これから後、あなたは人間をとるようになる のです。」

11 彼らは、舟を陸に着けると、何もかも捨てて、イエスに従った。

12 さて、イエスがある町におられたとき、全身らい病の人がいた。イエスを見ると、ひ れ伏してお願いした。「主よ。お心一つで、私はきよくしていただけます。」

13 イエスは手を伸ばして、彼にさわり、「わたしの心だ。きよくなれ。」と言われ た。すると、すぐに、そのらい病が消えた。

14 イエスは、彼にこう命じられた。「だれにも話してはいけない。ただ祭司のところ に行って、自分を見せなさい。そして人々へのあかしのため、モーセが命じたように、あ なたのきよめの供え物をしなさい。」

15 しかし、イエスのうわさは、ますます広まり、多くの人の群れが、話を聞きに、ま た、病気を直してもらいに集まって来た。

16 しかし、イエスご自身は、よく荒野に退いて祈っておられた。

17 ある日のこと、イエスが教えておられると、パリサイ人と律法の教師たちも、そこに すわっていた。彼らは、ガリラヤとユダヤとのすべての村々や、エルサレムから来てい た。イエスは、主の御力をもって、病気を直しておられた。

18 するとそこに、男たちが、中風をわずらっている人を、床のままで運んで来た。そし て、何とかして家の中に運び込み、イエスの前に置こうとしていた。

19 しかし、大ぜい人がいて、どうにも病人を運び込む方法が見つからないので、屋 上に上って屋根の瓦をはがし、そこから彼の寝床を、ちょうど人々の真中のイエス の前に、つり降ろした。

20 彼らの信仰を見て、イエスは「友よ。あなたの罪は赦されました。」と言われた。

21 ところが、律法学者、パリサイ人たちは、理屈を言い始めた。「神をけがすこと を言うこの人は、いったい何者だ。神のほかに、だれが罪を赦すことができよう。」

22 その理屈を見抜いておられたイエスは、彼らに言われた。「なぜ、心の中でそんな理 屈を言っているのか。

23 『あなたの罪は赦された。』と言うのと、『起きて歩け。』と言うのと、どちらがや さしいか。

24 人の子が地上で罪を赦す権威を持っていることを、あなたがたに悟らせるため に。」と言って、中風の人に、「あなたに命じる。起きなさい。寝床をたたんで、 家に帰りなさい。」と言われた。

25 すると彼は、たちどころに人々の前で立ち上がり、寝ていた床をたたんで、神をあが めながら自分の家に帰った。

26 人々はみな、ひどく驚き、神をあがめ、恐れに満たされて、「私たちは、きょう、 驚くべきことを見た。」と言った。

27 この後、イエスは出て行き、収税所にすわっているレビという取税人に目を留めて、 「わたしについて来なさい。」と言われた。

28 するとレビは、何もかも捨て、立ち上がってイエスに従った。

29 そこでレビは、自分の家でイエスのために大ぶるまいをしたが、取税人たちや、ほか に大ぜいの人たちが食卓に着いていた。

30 すると、パリサイ人やその派の律法学者たちが、イエスの弟子たちに向かって、つぶ やいて言った。「なぜ、あなたがたは、取税人や罪人どもといっしょに飲み食いするので すか。」

31 そこで、イエスは答えて言われた。「医者を必要とするのは丈夫な者ではなく、病 人です。

32 わたしは正しい人を招くためではなく、罪人を招いて、悔い改めさせるために来たの です。」

33 彼らはイエスに言った。「ヨハネの弟子たちは、よく断食をしており、祈りもしてい ます。また、パリサイ人の弟子たちも同じなのに、あなたの弟子たちは食べたり飲んだり しています。」

34 イエスは彼らに言われた。「花婿がいっしょにいるのに、花婿につき添う友だちに断 食させることが、あなたがたにできますか。

35 しかし、やがてその時が来て、花婿が取り去られたら、その日には彼らは断食しま す。」

36 イエスはまた一つのたとえを彼らに話された。「だれも、新しい着物から布切れ を引き裂いて、古い着物に継ぎをするようなことはしません。そんなことをすれば、そ の新しい着物を裂くことになるし、また新しいのを引き裂いた継ぎ切れも、古い物に は合わないのです。

37 また、だれも新しいぶどう酒を古い皮袋に入れるようなことはしません。そんなこと をすれば、新しいぶどう酒は皮袋を張り裂き、ぶどう酒は流れ出て、皮袋もだめになって しまいます。

38 新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れなければなりません。

39 また、だれでも古いぶどう酒を飲んでから、新しい物を望みはしません。 『古い物は良い。』と言うのです。」

1 ある安息日に、イエスが麦畑を通っておられたとき、弟子たちは麦の穂を摘んで、 手でもみ出しては食べていた。

2 すると、あるパリサイ人たちが言った。「なぜ、あなたがたは、安息日にしてはなら ないことをするのですか。」

3 イエスは彼らに答えて言われた。「あなたがたは、ダビデが連れの者といっしょにい て、ひもじかったときにしたことを読まなかったのですか。

4 ダビデは神の家にはいって、祭司以外の者はだれも食べてはならない供えのパン を取って、自分も食べたし、供の者にも与えたではありませんか。」

5 そして、彼らに言われた。「人の子は、安息日の主です。」

6 別の安息日に、イエスは会堂にはいって教えておられた。そこに右手のなえた人がい た。

7 そこで律法学者、パリサイ人たちは、イエスが安息日に人を直すかどうか、じっ と見ていた。彼を訴える口実を見つけるためであった。

8 イエスは彼らの考えをよく知っておられた。それで、手のなえた人に、「立って、真 中に出なさい。」と言われた。その人は、起き上がって、そこに立った。

9 イエスは人々に言われた。「あなたがたに聞きますが、安息日にしてよいのは、 善を行なうことなのか、それとも悪を行なうことなのか。いのちを救うことなのか、それ とも失うことなのか、どうですか。」

10 そして、みなの者を見回してから、その人に、「手を伸ばしなさい。」と言われ た。そのとおりにすると、彼の手は元どおりになった。

11 すると彼らはすっかり分別を失ってしまって、イエスをどうしてやろうかと話し合っ た。

12 このころ、イエスは祈るために山に行き、神に祈りながら夜を明かされた。

13 夜明けになって、弟子たちを呼び寄せ、その中から十二人を選び、彼らに使徒とい う名をつけられた。

14 すなわち、ペテロという名をいただいたシモンとその兄弟アンデレ、ヤコブとヨハ

ネ、ピリポとバルトロマイ、

15 マタイとトマス、アルパヨの子ヤコブと熱心党員と呼ばれるシモン、

16 ヤコブの子ユダとイエスを裏切ったイスカリオテ・ユダである。

17 それから、イエスは、彼らとともに山を下り、平らな所にお立ちになったが、多く の弟子たちの群れや、ユダヤ全土、エルサレム、さてはツロやシドンの海べから来た大ぜ いの民衆がそこにいた。

18 イエスの教えを聞き、また病気を直していただくために来た人々である。また、汚れ た霊に悩まされていた人たちもいやされた。

19 群衆のだれもが何とかしてイエスにさわろうとしていた。大きな力がイエスか ら出て、すべての人をいやしたからである。

20 イエスは目を上げて弟子たちを見つめながら、話しだされた。「貧しい者は幸いで す。神の国はあなたがたのものですから。

21 いま飢えている者は幸いです。あなたがたは、やがて飽くことができますから。 いま泣いている者は幸いです。あなたがたは、いまに笑うようになりますから。

22 人の子のために、人々があなたがたを憎むとき、また、あなたがたを除名し、はずか しめ、あなたがたの名をあしざまにけなすとき、あなたがたは幸いです。

23 その日には、喜びなさい。おどり上がって喜びなさい。天ではあなたがたの報い は大きいからです。彼らの先祖も、預言者たちをそのように扱ったのです。

24 しかし、富んでいるあなたがたは、哀れな者です。慰めを、すでに受けているからで す。

25 いま食べ飽きているあなたがたは、哀れな者です。やがて、飢えるようになるからで す。いま笑っているあなたがたは、哀れな者です。やがて悲しみ泣くようになるからで す。

26 みなの人にほめられるときは、あなたがたは哀れな者です。彼らの先祖は、にせ預言 者たちをそのように扱ったからです。

27 しかし、いま聞いているあなたがたに、わたしはこう言います。あなたの敵を愛しな さい。あなたを憎む者に善を行ないなさい。

28 あなたをのろう者を祝福しなさい。あなたを侮辱する者のために祈りなさい。

29 あなたの片方の頬を打つ者には、ほかの頬をも向けなさい。上着を奪い取る者には、 下着も拒んではいけません。

30 すべて求める者には与えなさい。奪い取る者からは取り戻してはいけません。

31 自分にしてもらいたいと望むとおり、人にもそのようにしなさい。

32 自分を愛する者を愛したからといって、あなたがたに何の良いところがあるでしょ う。罪人たちでさえ、自分を愛する者を愛しています。

33 自分に良いことをしてくれる者に良いことをしたからといって、あなたがた に何の良いところがあるでしょう。罪人たちでさえ、同じことをしています。

34 返してもらうつもりで人に貸してやったからといって、あなたがたに何の良いところ があるでしょう。貸した分を取り返すつもりなら、罪人たちでさえ、罪人たちに貸してい ます。

35 ただ、自分の敵を愛しなさい。彼らによくしてやり、返してもらうことを考えず に貸しなさい。そうすれば、あなたがたの受ける報いはすばらしく、あなたがたは、い と高き方の子どもになれます。なぜなら、いと高き方は、恩知らずの悪人にも、あわれ み深いからです。

36 あなたがたの天の父があわれみ深いように、あなたがたも、あわれみ深くしなさい。

37 さばいてはいけません。そうすれば、自分もさばかれません。人を罪に定めてはいけ ません。そうすれば、自分も罪に定められません。赦しなさい。そうすれば、自分も赦さ れます。

38 与えなさい。そうすれば、自分も与えられます。人々は量りをよくして、押しつけ、 揺すり入れ、あふれるまでにして、ふところに入れてくれるでしょう。あなたがたは、 人を量る量りで、自分も量り返してもらうからです。」

39 イエスはまた一つのたとえを話された。「いったい、盲人に盲人の手引きができるで しょうか。ふたりとも穴に落ち込まないでしょうか。

40 弟子は師以上には出られません。しかし十分訓練を受けた者はみな、自分の師ぐらい にはなるのです。

41 あなたは、兄弟の目にあるちりが見えながら、どうして自分の目にある梁には気がつ かないのですか。

42 自分の目にある梁が見えずに、どうして兄弟に、『兄弟。あなたの目のちりを取らせ てください。』と言えますか。偽善者たち。まず自分の目から梁を取りのけなさい。そう してこそ、兄弟の目のちりがはっきり見えて、取りのけることができるのです。

43 悪い実を結ぶ良い木はないし、良い実を結ぶ悪い木もありません。

44 木はどれでも、その実によってわかるものです。いばらからいちじくは取れず、野ば らからぶどうを集めることはできません。

45 良い人は、その心の良い倉から良い物を出し、悪い人は、悪い倉から悪い物を出しま す。なぜなら人の口は、心に満ちているものを話すからです。

46 なぜ、わたしを『主よ、主よ。』と呼びながら、わたしの言うことを行なわないので すか。

47 わたしのもとに来て、わたしのことばを聞き、それを行なう人たちがどんな人に似て いるか、あなたがたに示しましょう。

48 その人は、地面を深く掘り下げ、岩の上に土台を据えて、それから家を建て た人に似ています。洪水になり、川の水がその家に押し寄せたときも、しっかり建てられ ていたから、びくともしませんでした。

49 聞いても実行しない人は、土台なしで地面に家を建てた人に似ています。 川の水が押し寄せると、家は一ぺんに倒れてしまい、そのこわれ方はひどいものとなりま した。」

1 イエスは、耳を傾けている民衆にこれらのことばをみな話し終えられると、カペナウ ムにはいられた。

2 ところが、ある百人隊長に重んじられているひとりのしもべが、病気で死にかけてい た。

3 百人隊長は、イエスのことを聞き、みもとにユダヤ人の長老たちを送って、しもべ を助けに来てくださるようお願いした。

4 イエスのもとに来たその人たちは、熱心にお願いして言った。「この人は、あなたに そうしていただく資格のある人です。

5 この人は、私たちの国民を愛し、私たちのために会堂を建ててくれた人です。」

6 イエスは、彼らといっしょに行かれた。そして、百人隊長の家からあまり遠くな い所に来られたとき、百人隊長は友人たちを使いに出して、イエスに伝えた。「主よ。わ ざわざおいでくださいませんように。あなたを私の屋根の下にお入れする資格は、私には ありません。

7 ですから、私のほうから伺うことさえ失礼と存じました。ただ、おことばをいただか せてください。そうすれば、私のしもべは必ずいやされます。

8 と申しますのは、私も権威の下にある者ですが、私の下にも兵士たちがいまして、そ のひとりに『行け。』と言えば行きますし、別の者に『来い。』と言えば来ます。ま た、しもべに『これをせよ。』と言えば、そのとおりにいたします。」

9 これを聞いて、イエスは驚かれ、ついて来ていた群衆のほうに向いて言われた。「あ なたがたに言いますが、このようなりっぱな信仰は、イスラエルの中にも見たことがあり ません。」

10 使いに来た人たちが家に帰ってみると、しもべはよくなっていた。

11 それから間もなく、イエスはナインという町に行かれた。弟子たちと大ぜい の人の群れがいっしょに行った。

12 イエスが町の門に近づかれると、やもめとなった母親のひとり息子が、死んでかつ ぎ出されたところであった。町の人たちが大ぜいその母親につき添っていた。

13 主はその母親を見てかわいそうに思い、「泣かなくてもよい。」と言われた。

14 そして近寄って棺に手をかけられると、かついでいた人たちが立ち止まったので、 「青年よ。あなたに言う、起きなさい。」と言われた。

15 すると、その死人が起き上がって、ものを言い始めたので、イエスは彼を母親に返さ れた。

16 人々は恐れを抱き、「大預言者が私たちのうちに現われた。」とか、「神がそ の民を顧みてくださった。」などと言って、神をあがめた。

17 イエスについてこの話がユダヤ全土と回りの地方一帯に広まった。

18 さて、ヨハネの弟子たちは、これらのことをすべてヨハネに報告した。

19 すると、ヨハネは、弟子の中からふたりを呼び寄せて、主のもとに送り、「おいでに なるはずの方は、あなたですか。それとも、私たちはほかの方を待つべきでしょう か。」と言わせた。

20 ふたりはみもとに来て言った。「バプテスマのヨハネから遣わされてまいりました。 『おいでになるはずの方は、あなたですか。それとも私たちはなおほかの方を待つべきで しょうか。』とヨハネが申しております。」

21 ちょうどそのころ、イエスは、多くの人々を病気と苦しみと悪霊からいやし、ま た多くの盲人を見えるようにされた。

22 そして、答えてこう言われた。「あなたがたは行って、自分たちの見たり聞いたりし たことをヨハネに報告しなさい。盲人が見えるようになり、足なえが歩き、らい病人がき よめられ、つんぼの人が聞こえ、死人が生き返り、貧しい者に福音が宣べ伝えられていま す。

23 だれでも、わたしにつまずかない者は幸いです。」

24 ヨハネの使いが帰ってから、イエスは群衆に、ヨハネについて話しだされた。「あな たがたは、何を見に荒野に出て行ったのですか。風に揺れる葦ですか。

25 でなかったら、何を見に行ったのですか。柔らかい着物を着た人ですか。きらびやか な着物を着て、ぜいたくに暮らしている人たちなら宮殿にいます。

26 でなかったら、何を見に行ったのですか。預言者ですか。そのとおり。だが、わたし が言いましょう。預言者よりもすぐれた者をです。

27 その人こそ、

『見よ、わたしは使いをあなたの前に遣わし、

あなたの道を、あなたの前に備えさせよう。』 と書かれているその人です。

28 あなたがたに言いますが、女から生まれた者の中で、ヨハネよりもすぐれた人は、ひ とりもいません。しかし、神の国で一番小さい者でも、彼よりすぐれています。

29 ヨハネの教えを聞いたすべての民は、取税人たちさえ、ヨハネのバプテスマを受け て、神の正しいことを認めたのです。

30 これに反して、パリサイ人、律法の専門家たちは、彼からバプテスマを受けないで、 神の自分たちに対するみこころを拒みました。

31 では、この時代の人々は、何にたとえたらよいでしょう。何に似ているでしょう。

32 市場にすわって、互いに呼びかけながら、こう言っている子どもたちに似ています。 『笛を吹いてやっても、君たちは踊らなかった。

弔いの歌を歌ってやっても、泣かなかった。』

33 というわけは、バプテスマのヨハネが来て、パンも食べず、ぶどう酒も飲まずにいる

と、『あれは悪霊につかれている。』とあなたがたは言うし、

34 人の子が来て、食べもし、飲みもすると、『あれ見よ。食いしんぼうの大酒飲み、取 税人や罪人の仲間だ。』と言うのです。

35 だが、知恵の正しいことは、そのすべての子どもたちが証明します。」

36 さて、あるパリサイ人が、いっしょに食事をしたい、とイエスを招いたので、そのパ リサイ人の家にはいって食卓に着かれた。

37 すると、その町にひとりの罪深い女がいて、イエスがパリサイ人の家で食卓に着いて

おられることを知り、香油のはいった石膏のつぼを持って来て、

38 泣きながら、イエスのうしろで御足のそばに立ち、涙で御足をぬらし始め、髪の毛で ぬぐい、御足に口づけして、香油を塗った。

39 イエスを招いたパリサイ人は、これを見て、「この方がもし預言者なら、自分にさわ っている女がだれで、どんな女であるか知っておられるはずだ。この女は罪深い者なのだ から。」と心ひそかに思っていた。

40 するとイエスは、彼に向かって、「シモン。あなたに言いたいことがありま す。」と言われた。シモンは、「先生。お話しください。」と言った。

41 「ある金貸しから、ふたりの者が金を借りていた。ひとりは五百デナリ、ほかのひと りは五十デナリ借りていた。

42 彼らは返すことができなかったので、金貸しはふたりとも赦してやった。 では、ふたりのうちどちらがよけいに金貸しを愛するようになるでしょうか。」

43 シモンが、「よけいに赦してもらったほうだと思います。」と答えると、イエスは、 「あなたの判断は当たっています。」と言われた。

44 そしてその女のほうを向いて、シモンに言われた。「この女を見ましたか。わたしが この家にはいって来たとき、あなたは足を洗う水をくれなかったが、この女は、涙でわた しの足をぬらし、髪の毛でぬぐってくれました。

45 あなたは、口づけしてくれなかったが、この女は、わたしがはいって来たときか ら足に口づけしてやめませんでした。

46 あなたは、わたしの頭に油を塗ってくれなかったが、この女は、わたしの足に香 油を塗ってくれました。

47 だから、わたしは言うのです。『この女の多くの罪は赦されています。というのは、 彼女はよけい愛したからです。しかし少ししか赦されない者は、少ししか愛しませ ん。』」

48 そして女に、「あなたの罪は赦されています。」と言われた。

49 すると、いっしょに食卓にいた人たちは、心の中でこう言い始めた。「罪を赦したり するこの人は、いったいだれだろう。」

50 しかし、イエスは女に言われた。「あなたの信仰が、あなたを救ったのです。安心し て行きなさい。」

1 その後、イエスは、神の国を説き、その福音を宣べ伝えながら、町や村を次か ら次に旅をしておられた。十二弟子もお供をした。

2 また、悪霊や病気を直していただいた女たち、すなわち、七つの悪霊を追い出してい

ただいたマグダラの女と呼ばれるマリヤ、

3 ヘロデの執事クーザの妻ヨハンナ、スザンナ、そのほか自分の財産をもって彼ら に仕えている大ぜいの女たちもいっしょであった。

4 さて、大ぜいの人の群れが集まり、また方々の町からも人々がみもとにやって来たの で、イエスはたとえを用いて話された。

5 「種を蒔く人が種蒔きに出かけた。蒔いているとき、道ばたに落ちた種があった。す ると、人に踏みつけられ、空の鳥がそれを食べてしまった。

6 また、別の種は岩の上に落ち、生え出たが、水分がなかったので、枯れてしまった。

7 また、別の種はいばらの真中に落ちた。ところが、いばらもいっしょに生え出て、そ れを押しふさいでしまった。

8 また、別の種は良い地に落ち、生え出て、百倍の実を結んだ。」 イエスは、これらのことを話しながら「聞く耳のある者は聞きなさい。」と叫ばれた。

9 さて、弟子たちは、このたとえがどんな意味かをイエスに尋ねた。

10 そこでイエスは言われた。「あなたがたに、神の国の奥義を知ることが許されている が、ほかの者には、たとえで話します。彼らが見ていても見えず、聞いていても悟らない ためです。

11 このたとえの意味はこうです。種は神のことばです。

12 道ばたに落ちるとは、こういう人たちのことです。みことばを聞いたが、あとから悪 魔が来て、彼らが信じて救われることのないように、その人たちの心から、みことば を持ち去ってしまうのです。

13 岩の上に落ちるとは、こういう人たちのことです。聞いたときには喜んでみことば を受け入れるが、根がないので、しばらくは信じていても、試練のときになると、 身を引いてしまうのです。

14 いばらの中に落ちるとは、こういう人たちのことです。みことばを聞きはしたが、と かくしているうちに、この世の心づかいや、富や、快楽によってふさがれて、実が熟する までにならないのです。

15 しかし、良い地に落ちるとは、こういう人たちのことです。正しい、良い心でみこと ばを聞くと、それをしっかりと守り、よく耐えて、実を結ばせるのです。

16 あかりをつけてから、それを器で隠したり、寝台の下に置いたりする者はありませ ん。燭台の上に置きます。はいって来る人々に、その光が見えるためです。

17 隠れているもので、あらわにならぬものはなく、秘密にされているもので、知られ ず、また現われないものはありません。

18 だから、聞き方に注意しなさい。というのは、持っている人は、さらに与えられ、 持たない人は、持っていると思っているものまでも取り上げられるからです。」

19 イエスのところに母と兄弟たちが来たが、群衆のためにそばへ近寄れなかった。

20 それでイエスに、「あなたのおかあさんと兄弟たちが、あなたに会おうとして、 外に立っています。」という知らせがあった。

21 ところが、イエスは人々にこう答えられた。「わたしの母、わたしの兄弟たちとは、 神のことばを聞いて行なう人たちです。」

22 そのころのある日のこと、イエスは弟子たちといっしょに舟に乗り、「さあ、 湖の向こう岸へ渡ろう。」と言われた。それで弟子たちは舟を出した。

23 舟で渡っている間にイエスはぐっすり眠ってしまわれた。ところが突風が湖に吹きお ろして来たので、弟子たちは水をかぶって危険になった。

24 そこで、彼らは近寄って行ってイエスを起こし、「先生、先生。私たちはおぼれ て死にそうです。」と言った。イエスは、起き上がって、風と荒波とをしかりつけられ た。すると風も波も治まり、なぎになった。

25 イエスは彼らに、「あなたがたの信仰はどこにあるのです。」と言われた。弟子たち は驚き恐れて互いに言った。「風も水も、お命じになれば従うとは、いったいこの方はど ういう方なのだろう。」

26 こうして彼らは、ガリラヤの向こう側のゲラサ人の地方に着いた。

27 イエスが陸に上がられると、この町の者で悪霊につかれている男がイエスに出会っ た。彼は、長い間着物も着けず、家には住まないで、墓場に住んでいた。

28 彼はイエスを見ると、叫び声をあげ、御前にひれ伏して大声で言った。「い と高き神の子、イエスさま。いったい私に何をしようというのです。お願いです。どう か私を苦しめないでください。」

29 それは、イエスが、汚れた霊に、この人から出て行け、と命じられたからである。 汚れた霊が何回となくこの人を捕えたので、彼は鎖や足かせでつながれて看視されていた が、それでもそれらを断ち切っては悪霊によって荒野に追いやられていたのである。

30 イエスが、「何という名か。」とお尋ねになると、「レギオンです。」と答えた。悪 霊が大ぜい彼にはいっていたからである。

31 悪霊どもはイエスに、底知れぬ所に行け、とはお命じになりませんようにと願った。

32 ちょうど、山のそのあたりに、おびただしい豚の群れが飼ってあったので、悪霊ども は、その豚にはいることを許してくださいと願った。イエスはそれを許された。

33 悪霊どもは、その人から出て、豚にはいった。すると、豚の群れはいきなりがけ を駆け下って湖にはいり、おぼれ死んだ。

34 飼っていた者たちは、この出来事を見て逃げ出し、町や村々でこの事を告げ知らせ た。

35 人々が、この出来事を見に来て、イエスのそばに来たところ、イエスの足もとに、悪 霊の去った男が着物を着て、正気に返って、すわっていた。人々は恐ろしくなった。

36 目撃者たちは、悪霊につかれていた人の救われた次第を、その人々に知らせた。

37 ゲラサ地方の民衆はみな、すっかりおびえてしまい、イエスに自分たちのところか ら離れていただきたいと願った。そこで、イエスは舟に乗って帰られた。

38 そのとき、悪霊を追い出された人が、お供をしたいとしきりに願ったが、イエスはこ う言って彼を帰された。

39 「家に帰って、神があなたにどんなに大きなことをしてくださったかを、話して聞か せなさい。」そこで彼は出て行って、イエスが自分にどんなに大きなことをしてくださっ たかを、町中に言い広めた。

40 さて、イエスが帰られると、群衆は喜んで迎えた。みなイエスを待ちわびていたから である。

41 するとそこに、ヤイロという人が来た。この人は会堂管理者であった。彼はイエス の足もとにひれ伏して自分の家に来ていただきたいと願った。

42 彼には十二歳ぐらいのひとり娘がいて、死にかけていたのである。イエスがお出かけ になると、群衆がみもとに押し迫って来た。

43 ときに、十二年の間長血をわずらった女がいた。だれにも直してもらえなかったこ

の女は、

44 イエスのうしろに近寄って、イエスの着物のふさにさわった。すると、たちどころ に出血が止まった。

45 イエスは、「わたしにさわったのは、だれですか。」と言われた。みな自分ではない と言ったので、ペテロは、「先生。この大ぜいの人が、ひしめき合って押しているので す。」と言った。

46 しかし、イエスは、「だれかが、わたしにさわったのです。わたしから力が出て行く のを感じたのだから。」と言われた。

47 女は、隠しきれないと知って、震えながら進み出て、御前にひれ伏し、すべて の民の前で、イエスにさわったわけと、たちどころにいやされた次第とを話した。

48 そこで、イエスは彼女に言われた。「娘よ。あなたの信仰があなたを直したのです。 安心して行きなさい。」

49 イエスがまだ話しておられるときに、会堂管理者の家から人が来て言った。「あなた のお嬢さんはなくなりました。もう、先生を煩わすことはありません。」

50 これを聞いて、イエスは答えられた。「恐れないで、ただ信じなさい。そうすれば、 娘は直ります。」

51 イエスは家にはいられたが、ペテロとヨハネとヤコブ、それに子どもの父と母のほか は、だれもいっしょにはいることをお許しにならなかった。

52 人々はみな、娘のために泣き悲しんでいた。しかし、イエスは言われた。「泣かなく てもよい。死んだのではない。眠っているのです。」

53 人々は、娘が死んだことを知っていたので、イエスをあざ笑っていた。

54 しかしイエスは、娘の手を取って、叫んで言われた。「子どもよ。起きなさい。」

55 すると、娘の霊が戻って、娘はただちに起き上がった。それでイエスは、娘に食事を させるように言いつけられた。

56 両親がひどく驚いていると、イエスは、この出来事をだれにも話さないように命じら れた。

1 イエスは、十二人を呼び集めて、彼らに、すべての悪霊を追い出し、病気を直すため の、力と権威とをお授けになった。

2 それから、神の国を宣べ伝え、病気を直すために、彼らを遣わされた。

3 イエスは、こう言われた。「旅のために何も持って行かないようにしなさい。杖も、 袋も、パンも、金も。また下着も、二枚は、いりません。

4 どんな家にはいっても、そこにとどまり、そこから次の旅に出かけなさい。

5 人々があなたがたを受け入れないばあいは、その町を出て行くときに、彼らに対す る証言として、足のちりを払い落としなさい。」

6 十二人は出かけて行って、村から村へと回りながら、至る所で福音を宣べ伝え、病 気を直した。

7 さて、国主ヘロデは、このすべての出来事を聞いて、ひどく当惑していた。それ

は、ある人々が、「ヨハネが死人の中からよみがえったのだ。」と言い、

8 ほかの人々は、「エリヤが現われたのだ。」と言い、さらに別の人々は、「昔の預言 者のひとりがよみがえったのだ。」と言っていたからである。

9 ヘロデは言った。「ヨハネなら、私が首をはねたのだ。そうしたことがうわさされて いるこの人は、いったいだれなのだろう。」ヘロデはイエスに会ってみようとした。

10 さて、使徒たちは帰って来て、自分たちのして来たことを報告した。それからイエス は彼らを連れてベツサイダという町へひそかに退かれた。

11 ところが、多くの群衆がこれを知って、ついて来た。それで、イエスは喜んで彼ら を迎え、神の国のことを話し、また、いやしの必要な人たちをおいやしになった。

12 そのうち、日も暮れ始めたので、十二人はみもとに来て、「この群衆を解散させてく ださい。そして回りの村や部落にやって、宿をとらせ、何か食べることができるようにさ せてください。私たちは、こんな人里離れた所にいるのですから。」と言った。

13 しかしイエスは、彼らに言われた。「あなたがたで、何か食べる物を上げなさい。」 彼らは言った。「私たちには五つのパンと二匹の魚のほか何もありません。私たちが出か けて行って、この民全体のために食物を買うのでしょうか。」

14 それは、男だけでおよそ五千人もいたからである。しかしイエスは、弟子たちに言わ れた。「人々を、五十人ぐらいずつ組にしてすわらせなさい。」

15 弟子たちは、そのようにして、全部をすわらせた。

16 するとイエスは、五つのパンと二匹の魚を取り、天を見上げて、それらを祝福し て裂き、群衆に配るように弟子たちに与えられた。

17 人々はみな、食べて満腹した。そして、余ったパン切れを取り集めると、十二かごあ った。

18 さて、イエスがひとりで祈っておられたとき、弟子たちがいっしょにいた。イエス は彼らに尋ねて言われた。「群衆はわたしのことをだれだと言っていますか。」

19 彼らは、答えて言った。「バプテスマのヨハネだと言っています。ある者はエリヤだ と言い、またほかの人々は、昔の預言者のひとりが生き返ったのだとも言っています。」

20 イエスは、彼らに言われた。「では、あなたがたは、わたしをだれだと言います か。」ペテロが答えて言った。「神のキリストです。」

21 するとイエスは、このことをだれにも話さないようにと、彼らを戒めて命じられた。

22 そして言われた。「人の子は、必ず多くの苦しみを受け、長老、祭司長、律法学者た ちに捨てられ、殺され、そして三日目によみがえらねばならないのです。」

23 イエスは、みなの者に言われた。「だれでもわたしについて来たいと思うなら、自 分を捨て、日々自分の十字架を負い、そしてわたしについて来なさい。

24 自分のいのちを救おうと思う者は、それを失い、わたしのために自分のいのち を失う者は、それを救うのです。

25 人は、たとい全世界を手に入れても、自分自身を失い、損じたら、何の得がありまし ょう。

26 もしだれでも、わたしとわたしのことばとを恥と思うなら、人の子も、自 分と父と聖なる御使いとの栄光を帯びて来るときには、そのような人のことを恥としま す。

27 しかし、わたしは真実をあなたがたに告げます。ここに立っている人々の中には、 神の国を見るまでは、決して死を味わわない者たちがいます。」

28 これらの教えがあってから八日ほどして、イエスは、ペテロとヨハネとヤコブと を連れて、祈るために、山に登られた。

29 祈っておられると、御顔の様子が変わり、御衣は白く光り輝いた。

30 しかも、ふたりの人がイエスと話し合っているではないか。それはモーセとエリヤで

あって、

31 栄光のうちに現われて、イエスがエルサレムで遂げようとしておられるご最期につい ていっしょに話していたのである。

32 ペテロと仲間たちは、眠くてたまらなかったが、はっきり目がさめると、イエスの栄 光と、イエスといっしょに立っているふたりの人を見た。

33 それから、ふたりがイエスと別れようとしたとき、ペテロがイエスに言った。「先 生。ここにいることは、すばらしいことです。私たちが三つの幕屋を造ります。あなたの ために一つ、モーセのために一つ、エリヤのために一つ。」ペテロは何を言うべきか を知らなかったのである。

34 彼がこう言っているうちに、雲がわき起こってその人々をおおった。彼らが雲に包ま れると、弟子たちは恐ろしくなった。

35 すると雲の中から、「これは、わたしの愛する子、わたしの選んだ者である。 彼の言うことを聞きなさい。」と言う声がした。

36 この声がしたとき、そこに見えたのはイエスだけであった。彼らは沈黙を守り、そ の当時は、自分たちの見たこのことをいっさい、だれにも話さなかった。

37 次の日、一行が山から降りて来ると、大ぜいの人の群れがイエスを迎えた。

38 すると、群衆の中から、ひとりの人が叫んで言った。「先生。お願いです。息 子を見てやってください。ひとり息子です。

39 ご覧ください。霊がこの子に取りつきますと、突然叫び出すのです。そしてひきつけ させてあわを吹かせ、かき裂いて、なかなか離れようとしません。

40 お弟子たちに、この霊を追い出してくださるようお願いしたのですが、お弟子たちに はできませんでした。」

41 イエスは答えて言われた。「ああ、不信仰な、曲がった今の世だ。いつまで、あなた がたといっしょにいて、あなたがたにがまんしていなければならないのでしょう。あなた の子をここに連れて来なさい。」

42 その子が近づいて来る間にも、悪霊は彼を打ち倒して、激しくひきつけさせてしまっ た。それで、イエスは汚れた霊をしかって、その子をいやし、父親に渡された。

43 人々はみな、神のご威光に驚嘆した。 イエスのなさったすべてのことに、人々がみな驚いていると、イエスは弟子たちにこ う言われた。

44 「このことばを、しっかりと耳に入れておきなさい。人の子は、いまに人々 の手に渡されます。」

45 しかし、弟子たちは、このみことばが理解できなかった。このみことばの意味は、わ からないように、彼らから隠されていたのである。また彼らは、このみことばについてイ エスに尋ねるのを恐れた。

46 さて、弟子たちの間に、自分たちの中で、だれが一番偉いかという議論が持ち上がっ た。

47 しかしイエスは、彼らの心の中の考えを知っておられて、ひとりの子ども

の手を取り、自分のそばに立たせ、

48 彼らに言われた。「だれでも、このような子どもを、わたしの名のゆえに受け入れ る者は、わたしを受け入れる者です。また、わたしを受け入れる者は、わたしを遣わされ た方を受け入れる者です。あなたがたすべての中で一番小さい者が一番偉いのです。」

49 ヨハネが答えて言った。「先生。私たちは、先生の名を唱えて悪霊を追い出してい る者を見ましたが、やめさせました。私たちの仲間ではないので、やめさせたのです。」

50 しかしイエスは、彼に言われた。「やめさせることはありません。あなたがたに反 対しない者は、あなたがたの味方です。」

51 さて、天に上げられる日が近づいて来たころ、イエスは、エルサレムに行こうとし

て御顔をまっすぐ向けられ、

52 ご自分の前に使いを出された。彼らは行って、サマリヤ人の町にはいり、イエスのた めに準備した。

53 しかし、イエスは御顔をエルサレムに向けて進んでおられたので、サマリヤ人はイエ スを受け入れなかった。

54 弟子のヤコブとヨハネが、これを見て言った。「主よ。私たちが天から火を呼び下し て、彼らを焼き滅ぼしましょうか。」

55 しかし、イエスは振り向いて、彼らを戒められた。

56 そして一行は別の村に行った。

57 さて、彼らが道を進んで行くと、ある人がイエスに言った。「私はあなたのおいでに なる所なら、どこにでもついて行きます。」

58 すると、イエスは彼に言われた。「狐には穴があり、空の鳥には巣があるが、 人の子には枕する所もありません。」

59 イエスは別の人に、こう言われた。「わたしについて来なさい。」しかしそ の人は言った。「まず行って、私の父を葬ることを許してください。」

60 すると彼に言われた。「死人たちに彼らの中の死人たちを葬らせなさい。あなた は出て行って、神の国を言い広めなさい。」

61 別の人はこう言った。「主よ。あなたに従います。ただその前に、家の者にいとまご いに帰らせてください。」

62 するとイエスは彼に言われた。「だれでも、手を鋤につけてから、うしろ を見る者は、神の国にふさわしくありません。」

1 その後、主は、別に七十人を定め、ご自分が行くつもりのすべての町や村へ、ふたり ずつ先にお遣わしになった。

2 そして、彼らに言われた。「実りは多いが、働き手が少ない。だから、収穫の主に、 収穫のために働き手を送ってくださるように祈りなさい。

3 さあ、行きなさい。いいですか。わたしがあなたがたを遣わすのは、狼の中に小 羊を送り出すようなものです。

4 財布も旅行袋も持たず、くつもはかずに行きなさい。だれにも、道であいさつしては いけません。

5 どんな家にはいっても、まず、『この家に平安があるように。』と言いなさい。

6 もしそこに平安の子がいたら、あなたがたの祈った平安は、その人の上にとどまりま す。だが、もしいないなら、その平安はあなたがたに返って来ます。

7 その家に泊まっていて、出してくれる物を飲み食いしなさい。働く者が報酬を受ける のは、当然だからです。家から家へと渡り歩いてはいけません。

8 どの町にはいっても、あなたがたを受け入れてくれたら、出される物を食べなさい。

9 そして、その町の病人を直し、彼らに、『神の国が、あなたがたに近づい た。』と言いなさい。

10 しかし、町にはいっても、人々があなたがたを受け入れないならば、大通り に出て、こう言いなさい。

11 『私たちは足についたこの町のちりも、あなたがたにぬぐい捨てて行きます。しか

し、神の国が近づいたことは承知していなさい。』

12 あなたがたに言うが、その日には、その町よりもソドムのほうがまだ罰が軽いので す。

13 ああコラジン。ああベツサイダ。おまえたちの間に起こった力あるわざが、もしもツ ロとシドンでなされたのだったら、彼らはとうの昔に荒布をまとい、灰の中にすわって、 悔い改めていただろう。

14 しかし、さばきの日には、そのツロとシドンのほうが、まだおまえたちより罰が軽い のだ。

15 カペナウム。どうしておまえが天に上げられることがありえよう。ハデスにまで落と されるのだ。

16 あなたがたに耳を傾ける者は、わたしに耳を傾ける者であり、あなたがた を拒む者は、わたしを拒む者です。わたしを拒む者は、わたしを遣わされた方を拒む者で す。」

17 さて、七十人が喜んで帰って来て、こう言った。「主よ。あなたの御名を使うと、悪 霊どもでさえ、私たちに服従します。」

18 イエスは言われた。「わたしが見ていると、サタンが、いなずまのように天から落ち ました。

19 確かに、わたしは、あなたがたに、蛇やさそりを踏みつけ、敵のあらゆ る力に打ち勝つ権威を授けたのです。だから、あなたがたに害を加えるものは何一つあり ません。

20 だがしかし、悪霊どもがあなたがたに服従するからといって、喜んではなりませ ん。ただあなたがたの名が天に書きしるされていることを喜びなさい。」

21 ちょうどこのとき、イエスは、聖霊によって喜びにあふれて言われた。「天地の主で あられる父よ。あなたをほめたたえます。これらのことを、賢い者や知恵のある者に は隠して、幼子たちに現わしてくださいました。そうです、父よ。これがみこころにかな ったことでした。

22 すべてのものが、わたしの父から、わたしに渡されています。それで、子がだれであ るかは、父のほかには知る者がありません。また父がだれであるかは、子と、 子が父を知らせようと心に定めた人たちのほかは、だれも知る者がありません。」

23 それからイエスは、弟子たちのほうに向いて、ひそかに言われた。「あなたがた の見ていることを見る目は幸いです。

24 あなたがたに言いますが、多くの預言者や王たちがあなたがたの見ていることを見た いと願ったのに、見られなかったのです。また、あなたがたの聞いていることを聞きたい と願ったのに、聞けなかったのです。」

25 すると、ある律法の専門家が立ち上がり、イエスをためそうとして言った。「先 生。何をしたら永遠のいのちを自分のものとして受けることができるでしょうか。」

26 イエスは言われた。「律法には、何と書いてありますか。あなたはどう読んでいます か。」

27 すると彼は答えて言った。「『心を尽くし、思いを尽くし、力を尽くし、知性を尽く して、あなたの神である主を愛せよ。』また『あなたの隣人をあなた自身のように愛せ よ。』とあります。」

28 イエスは言われた。「そのとおりです。それを実行しなさい。そうすれば、いのち を得ます。」

29 しかし彼は、自分の正しさを示そうとしてイエスに言った。「では、私の隣人と は、だれのことですか。」

30 イエスは答えて言われた。 「ある人が、エルサレムからエリコへ下る道で、強盗に襲われた。強盗どもは、そ の人の着物をはぎ取り、なぐりつけ、半殺しにして逃げて行った。

31 たまたま、祭司がひとり、その道を下って来たが、彼を見ると、反対側を通り過ぎ て行った。

32 同じようにレビ人も、その場所に来て彼を見ると、反対側を通り過ぎて行った。

33 ところが、あるサマリヤ人が、旅の途中、そこに来合わせ、彼を見てかわいそう

に思い、

34 近寄って傷にオリーブ油とぶどう酒を注いで、ほうたいをし、自分の家畜に乗せて宿 屋に連れて行き、介抱してやった。

35 次の日、彼はデナリ二つを取り出し、宿屋の主人に渡して言った。『介抱してあげて

ください。もっと費用がかかったら、私が帰りに払います。』

36 この三人の中でだれが、強盗に襲われた者の隣人になったと思いますか。」

37 彼は言った。「その人にあわれみをかけてやった人です。」するとイエスは言われ た。「あなたも行って同じようにしなさい。」

38 さて、彼らが旅を続けているうち、イエスがある村にはいられると、マルタとい う女が喜んで家にお迎えした。

39 彼女にマリヤという妹がいたが、主の足もとにすわって、みことばに聞き入ってい た。

40 ところが、マルタは、いろいろともてなしのために気が落ち着かず、みもと に来て言った。「主よ。妹が私だけにおもてなしをさせているのを、何ともお思いになら ないのでしょうか。私の手伝いをするように、妹におっしゃってください。」

41 主は答えて言われた。「マルタ、マルタ。あなたは、いろいろなことを心配して、 気を使っています。

42 しかし、どうしても必要なことはわずかです。いや、一つだけです。マリヤはそ の良いほうを選んだのです。彼女からそれを取り上げてはいけません。」

1 さて、イエスはある所で祈っておられた。その祈りが終わると、弟子のひとりが、イ エスに言った。「主よ。ヨハネが弟子たちに教えたように、私たちにも祈りを教えてくだ さい。」

2 そこでイエスは、彼らに言われた。「祈るときには、こう言いなさい。 『父よ。御名があがめられますように。 御国が来ますように。

3 私たちの日ごとの糧を毎日お与えください。

4 私たちの罪をお赦しください。私たちも私たちに負いめのある者をみな赦します。 私たちを試みに会わせないでください。』」

5 また、イエスはこう言われた。「あなたがたのうち、だれかに友だちがいるとして、 真夜中にその人のところに行き、『君。パンを三つ貸してくれ。

6 友人が旅の途中、私のうちへ来たのだが、出してやるものがないのだ。』と言ったと します。

7 すると、彼は家の中からこう答えます。『めんどうをかけないでくれ。もう戸締まり もしてしまったし、子どもたちも私も寝ている。起きて、何かをやることはできない。』

8 あなたがたに言いますが、彼は友だちだからということで起きて何かを与えることは しないにしても、あくまで頼み続けるなら、そのためには起き上がって、必要な物を与え るでしょう。

9 わたしは、あなたがたに言います。求めなさい。そうすれば与えられます。捜しなさ い。そうすれば見つかります。たたきなさい。そうすれば開かれます。

10 だれであっても、求める者は受け、捜す者は見つけ出し、たたく者には開かれます。

11 あなたがたの中で、子どもが魚を下さいと言うときに、魚の代わりに蛇を与えるよう な父親が、いったいいるでしょうか。

12 卵を下さいと言うのに、だれが、さそりを与えるでしょう。

13 してみると、あなたがたも、悪い者ではあっても、自分の子どもには良い物を与える ことを知っているのです。とすれば、なおのこと、天の父が、求める人たちに、どうし て聖霊を下さらないことがありましょう。」

14 イエスは悪霊、それもおしの悪霊を追い出しておられた。悪霊が出て行くと、おしが ものを言い始めたので、群衆は驚いた。

15 しかし、彼らのうちには、「悪霊どものかしらベルゼブルによって、悪霊ども を追い出しているのだ。」と言う者もいた。

16 また、イエスをためそうとして、彼に天からのしるしを求める者もいた。

17 しかし、イエスは、彼らの心を見抜いて言われた。「どんな国でも、内輪もめした ら荒れすたれ、家にしても、内輪で争えばつぶれます。

18 サタンも、もし仲間割れしたのだったら、どうしてサタンの国が立ち行くことができ ましょう。それなのにあなたがたは、わたしがベルゼブルによって悪霊どもを追い出して いると言います。

19 もしもわたしが、ベルゼブルによって悪霊どもを追い出しているのなら、あなたがた の仲間は、だれによって追い出すのですか。だから、あなたがたの仲間が、あなたがたを さばく人となるのです。

20 しかし、わたしが、神の指によって悪霊どもを追い出しているのなら、神の国はあな たがたに来ているのです。

21 強い人が十分に武装して自分の家を守っているときには、その持ち物は安全です。

22 しかし、もっと強い者が襲って来て彼に打ち勝つと、彼の頼みにしていた武 具を奪い、分捕り品を分けます。

23 わたしの味方でない者はわたしに逆らう者であり、わたしとともに集めない者は散ら す者です。

24 汚れた霊が人から出て行って、水のない所をさまよいながら、休み場を捜します。 一つも見つからないので、『出て来た自分の家に帰ろう。』と言います。

25 帰って見ると、家は、掃除をしてきちんとかたづいていました。

26 そこで、出かけて行って、自分よりも悪いほかの霊を七つ連れて来て、みなはい り込んでそこに住みつくのです。そうなると、その人の後の状態は、初めよりもさら に悪くなります。」

27 イエスが、これらのことを話しておられると、群衆の中から、ひとり の女が声を張り上げてイエスに言った。「あなたを産んだ腹、あなたが吸った乳房は幸い です。」

28 しかし、イエスは言われた。「いや、幸いなのは、神のことばを聞いてそれ を守る人たちです。」

29 さて、群衆の数がふえて来ると、イエスは話し始められた。「この時代は悪い時代で す。しるしを求めているが、ヨナのしるしのほかには、しるしは与えられません。

30 というのは、ヨナがニネベの人々のために、しるしとなったように、人の子がこの時 代のために、しるしとなるからです。

31 南の女王が、さばきのときに、この時代の人々とともに立って、彼らを罪に定めま す。なぜなら、彼女はソロモンの知恵を聞くために地の果てから来たからです。しかし、 見なさい。ここにソロモンよりもまさった者がいるのです。

32 ニネベの人々が、さばきのときに、この時代の人々とともに立って、この人々 を罪に定めます。なぜなら、ニネベの人々はヨナの説教で悔い改めたからです。しかし、 見なさい。ここにヨナよりもまさった者がいるのです。

33 だれも、あかりをつけてから、それを穴倉や、枡の下に置く者はいません。燭 台の上に置きます。はいって来る人々に、その光が見えるためです。

34 からだのあかりは、あなたの目です。目が健全なら、あなたの全身も明るいが、しか し、目が悪いと、からだも暗くなります。

35 だから、あなたのうちの光が、暗やみにならないように、気をつけなさい。

36 もし、あなたの全身が明るくて何の暗い部分もないなら、その全身はちょうどあかり が輝いて、あなたを照らすときのように明るく輝きます。」

37 イエスが話し終えられると、ひとりのパリサイ人が、食事をいっしょにしてくださ い、とお願いした。そこでイエスは家にはいって、食卓に着かれた。

38 そのパリサイ人は、イエスが食事の前に、まずきよめの洗いをなさらないのを見て、 驚いた。

39 すると、主は言われた。「なるほど、あなたがたパリサイ人は、杯や大皿の外側はき よめるが、その内側は、強奪と邪悪とでいっぱいです。

40 愚かな人たち。外側を造られた方は、内側も造られたのではありませんか。

41 とにかく、うちのものを施しに用いなさい。そうすれば、いっさいが、あなたがたに とってきよいものとなります。

42 だが、忌まわしいものだ。パリサイ人。あなたがたは、はっか、うん香、あらゆる野 菜などの十分の一を納めているが、公義と神への愛とはなおざりにしています。これこ そ、実行しなければならない事がらです。ただし他のほうも、なおざりにしてはいけませ ん。

43 忌まわしいものだ。パリサイ人。あなたがたは、会堂の上席や、市場であいさつされ ることが好きです。

44 忌まわしいことだ。あなたがたは、人目につかぬ墓のようで、その上を歩く人々 も気がつかない。」

45 すると、ある律法の専門家が、答えて言った。「先生。そのようなことを言われるこ とは、私たちをも侮辱することです。」

46 しかし、イエスは言われた。「あなたがた律法の専門家たちも忌まわしいものだ。あ なたがたは、人々には負いきれない荷物を負わせるが、自分は、その荷物に指一本もさわ ろうとはしない。

47 忌まわしいことだ。あなたがたは、預言者たちの墓を建てている。しかし、あなたが たの先祖は預言者たちを殺したのです。

48 そのようにして、あなたがたは、自分の先祖のしたことの証人となり、それを認めて います。なぜなら、あなたがたの先祖が預言者たちを殺し、あなたがたがその墓を建てて いるからです。

49 だから、神の知恵もこう言いました。『わたしは預言者たちや使徒たちを彼らに遣わ すが、彼らは、そのうちのある者を殺し、ある者を迫害する。

50 それは、アベルの血から、祭壇と神の家との間で殺されたザカリヤの血に至るまで の、世の初めから流されたすべての預言者の血の責任を、この時代が問われるためであ

る。そうだ。わたしは言う。この時代はその責任を問われる。』 51-52 忌まわしいものだ。律法の専門家たち。あなたがたは、知識のかぎを持ち去り、自 分もはいらず、はいろうとする人々をも妨げたのです。」

53 イエスがそこを出て行かれると、律法学者、パリサイ人たちのイエスに対する激し い敵対と、いろいろのことについてのしつこい質問攻めとが始まった。

54 彼らは、イエスの口から出ることに、言いがかりをつけようと、ひそかに計った。

1 そうこうしている間に、おびただしい数の群衆が集まって来て、互いに足を踏み合う ほどになった。イエスはまず弟子たちに対して、話しだされた。「パリサイ人のパ ン種に気をつけなさい。それは彼らの偽善のことです。

2 おおいかぶされているもので、現わされないものはなく、隠されているもので、知ら れずに済むものはありません。

3 ですから、あなたがたが暗やみで言ったことが、明るみで聞かれ、家の中でささやい たことが、屋上で言い広められます。

4 そこで、わたしの友であるあなたがたに言います。からだを殺しても、あとはそれ以 上何もできない人間たちを恐れてはいけません。

5 恐れなければならない方を、あなたがたに教えてあげましょう。殺したあとで、ゲヘ ナに投げ込む権威を持っておられる方を恐れなさい。そうです。あなたがたに言いま す。この方を恐れなさい。

6 五羽の雀は二アサリオンで売っているでしょう。そんな雀の一羽でも、神の御前に は忘れられてはいません。

7 それどころか、あなたがたの頭の毛さえも、みな数えられています。恐れることはあ りません。あなたがたは、たくさんの雀よりもすぐれた者です。

8 そこで、あなたがたに言います。だれでも、わたしを人の前で認める者は、人の子も また、その人を神の御使いたちの前で認めます。

9 しかし、わたしを人の前で知らないと言う者は、神の御使いたちの前で知らない と言われます。

10 たとい、人の子をそしることばを使う者があっても、赦されます。しかし、聖霊をけ がす者は赦されません。

11 また、人々があなたがたを、会堂や役人や権力者などのところに連れて行ったとき、 何をどう弁明しようか、何を言おうかと心配するには及びません。

12 言うべきことは、そのときに聖霊が教えてくださるからです。」

13 群衆の中のひとりが、「先生。私と遺産を分けるように私の兄弟に話してくださ い。」と言った。

14 すると彼に言われた。「いったいだれが、わたしをあなたがたの裁判官や調停者に任 命したのですか。」

15 そして人々に言われた。「どんな貪欲にも注意して、よく警戒しなさい。なぜな ら、いくら豊かな人でも、その人のいのちは財産にあるのではないからです。」

16 それから人々にたとえを話された。 「ある金持ちの畑が豊作であった。

17 そこで彼は、心の中でこう言いながら考えた。『どうしよう。作物をたくわえてお

く場所がない。』

18 そして言った。『こうしよう。あの倉を取りこわして、もっと大きいのを建て、穀 物や財産はみなそこにしまっておこう。

19 そして、自分のたましいにこう言おう。「たましいよ。これから先何年分もいっぱ

い物がためられた。さあ、安心して、食べて、飲んで、楽しめ。」』

20 しかし神は彼に言われた。『愚か者。おまえのたましいは、今夜おまえから取り去ら れる。そうしたら、おまえが用意した物は、いったいだれのものになるのか。』

21 自分のためにたくわえても、神の前に富まない者はこのとおりです。」

22 それから弟子たちに言われた。「だから、わたしはあなたがたに言います。いのちの ことで何を食べようかと心配したり、からだのことで何を着ようかと心配したりするのは やめなさい。

23 いのちは食べ物よりたいせつであり、からだは着物よりたいせつだからです。

24 烏のことを考えてみなさい。蒔きもせず、刈り入れもせず、納屋も倉もありませ ん。けれども、神が彼らを養っていてくださいます。あなたがたは、鳥よりも、はるかに すぐれたものです。

25 あなたがたのうちのだれが、心配したからといって、自分のいのちを少しでも延ばす ことができますか。

26 こんな小さなことさえできないで、なぜほかのことまで心配するのですか。

27 ゆりの花のことを考えてみなさい。どうして育つのか。紡ぎもせず、織りもしないの です。しかし、わたしはあなたがたに言います。栄華を窮めたソロモンでさえ、このよう な花の一つほどにも着飾ってはいませんでした。

28 しかし、きょうは野にあって、あすは炉に投げ込まれる草をさえ、神はこのよう に装ってくださるのです。ましてあなたがたには、どんなによくしてくださることでしょ う。ああ、信仰の薄い人たち。

29 何を食べたらよいか、何を飲んだらよいか、と捜し求めることをやめ、気をもむこと をやめなさい。

30 これらはみな、この世の異邦人たちが切に求めているものです。しかし、あなたがた の父は、それがあなたがたにも必要であることを知っておられます。

31 何はともあれ、あなたがたは、神の国を求めなさい。そうすれば、これらの物は、そ れに加えて与えられます。

32 小さな群れよ。恐れることはありません。あなたがたの父である神は、喜んであなた がたに御国をお与えになるからです。

33 持ち物を売って、施しをしなさい。自分のために、古くならない財布を作り、朽ちる ことのない宝を天に積み上げなさい。そこには、盗人も近寄らず、しみもいためることが ありません。

34 あなたがたの宝のあるところに、あなたがたの心もあるからです。

35 腰に帯を締め、あかりをともしていなさい。

36 主人が婚礼から帰って来て戸をたたいたら、すぐに戸をあけようと、その帰り を待ち受けている人たちのようでありなさい。

37 帰って来た主人に、目をさましているところを見られるしもべたちは幸いです。まこ とに、あなたがたに告げます。主人のほうが帯を締め、そのしもべたちを食卓に着か せ、そばにいて給仕をしてくれます。

38 主人が真夜中に帰っても、夜明けに帰っても、いつでもそのようであることを見られ るなら、そのしもべたちは幸いです。

39 このことを知っておきなさい。もしも家の主人が、どろぼうの来る時間を知っていた なら、おめおめと自分の家に押し入られはしなかったでしょう。

40 あなたがたも用心していなさい。人の子は、思いがけない時に来るのですから。」

41 そこで、ペテロが言った。「主よ。このたとえは私たちのために話してくださるので すか。それともみなのためなのですか。」

42 主は言われた。「では、主人から、その家のしもべたちを任されて、食事時には彼ら に食べ物を与える忠実な思慮深い管理人とは、いったいだれでしょう。

43 主人が帰って来たときに、そのようにしているのを見られるしもべは幸いです。

44 わたしは真実をあなたがたに告げます。主人は彼に自分の全財産を任せるようになり ます。

45 ところが、もし、そのしもべが、『主人の帰りはまだだ。』と心の中で思い、下

男や下女を打ちたたき、食べたり飲んだり、酒に酔ったりし始めると、

46 しもべの主人は、思いがけない日の思わぬ時間に帰って来ます。そして、彼をきびし く罰して、不忠実な者どもと同じめに会わせるに違いありません。

47 主人の心を知りながら、その思いどおりに用意もせず、働きもしなかったしもべ は、ひどくむち打たれます。

48 しかし、知らずにいたために、むち打たれるようなことをしたしもべは、打たれて も、少しで済みます。すべて、多く与えられた者は多く求められ、多く任され た者は多く要求されます。

49 わたしが来たのは、地に火を投げ込むためです。だから、その火が燃えていたら と、どんなに願っていることでしょう。

50 しかし、わたしには受けるバプテスマがあります。それが成し遂げられるまでは、ど んなに苦しむことでしょう。

51 あなたがたは、地に平和を与えるためにわたしが来たと思っているのですか。そうで はありません。あなたがたに言いますが、むしろ、分裂です。

52 今から、一家五人は、三人がふたりに、ふたりが三人に対抗して分かれるようになり ます。

53 父は息子に、息子は父に対抗し、母は娘に、娘は母に対抗し、しゅうとめは嫁に、 嫁はしゅうとめに対抗して分かれるようになります。」

54 群衆にもこう言われた。「あなたがたは、西に雲が起こるのを見るとすぐに、『にわ か雨が来るぞ。』と言い、事実そのとおりになります。

55 また南風が吹きだすと、『暑い日になるぞ。』と言い、事実そのとおりになります。

56 偽善者たち。あなたがたは地や空の現象を見分けることを知りながら、どうして今の この時代を見分けることができないのですか。

57 また、なぜ自分から進んで、何が正しいかを判断しないのですか。

58 あなたを告訴する者といっしょに役人の前に行くときは、途中でも、熱心に彼と和 解するよう努めなさい。そうでないと、その人はあなたを裁判官のもとにひっぱって行き ます。裁判官は執行人に引き渡し、執行人は牢に投げ込んでしまいます。

59 あなたに言います。最後の一レプタを支払うまでは、そこから決して出られないので す。」

1 ちょうどそのとき、ある人たちがやって来て、イエスに報告した。ピラトがガリラ ヤ人たちの血をガリラヤ人たちのささげるいけにえに混ぜたというのである。

2 イエスは彼らに答えて言われた。「そのガリラヤ人たちがそのような災難を受けたか ら、ほかのどのガリラヤ人よりも罪深い人たちだったとでも思うのですか。

3 そうではない。わたしはあなたがたに言います。あなたがたも悔い改めないなら、み な同じように滅びます。

4 また、シロアムの塔が倒れ落ちて死んだあの十八人は、エルサレムに住んでいるだれ よりも罪深い人たちだったとでも思うのですか。

5 そうではない。わたしはあなたがたに言います。あなたがたも悔い改めないなら、み な同じように滅びます。」

6 イエスはこのようなたとえを話された。 「ある人が、ぶどう園にいちじくの木を植えておいた。実を取りに来たが、何も見つか らなかった。

7 そこで、ぶどう園の番人に言った。『見なさい。三年もの間、やって来ては、このい ちじくの実のなるのを待っているのに、なっていたためしがない。これを切り倒してしま

いなさい。何のために土地をふさいでいるのですか。』

8 番人は答えて言った。『ご主人。どうか、ことし一年そのままにしてやってくださ い。木の回りを掘って、肥やしをやってみますから。

9 もしそれで来年、実を結べばよし、それでもだめなら、切り倒してください。』」

10 イエスは安息日に、ある会堂で教えておられた。

11 すると、そこに十八年も病の霊につかれ、腰が曲がって、全然伸ばすことのできな い女がいた。

12 イエスは、その女を見て、呼び寄せ、「あなたの病気はいやされました。」と言っ

て、

13 手を置かれると、女はたちどころに腰が伸びて、神をあがめた。

14 すると、それを見た会堂管理者は、イエスが安息日にいやされたのを憤って、群 衆に言った。「働いてよい日は六日です。その間に来て直してもらうがよい。安息日に は、いけないのです。」

15 しかし、主は彼に答えて言われた。「偽善者たち。あなたがたは、安息日に、牛やろ ばを小屋からほどき、水を飲ませに連れて行くではありませんか。

16 この女はアブラハムの娘なのです。それを十八年もの間サタンが縛っていたのです。 安息日だからといってこの束縛を解いてやってはいけないのですか。」

17 こう話されると、反対していた者たちはみな、恥じ入り、群衆はみな、イエスのなさ ったすべての輝かしいみわざを喜んだ。

18 そこで、イエスはこう言われた。「神の国は、何に似ているでしょう。何に比べたら よいでしょう。

19 それは、からし種のようなものです。それを取って庭に蒔いたところ、生長して木に なり、空の鳥が枝に巣を作りました。」

20 またこう言われた。「神の国を何に比べましょう。

21 パン種のようなものです。女がパン種を取って、三サトンの粉に混ぜたところ、全 体がふくれました。」

22 イエスは、町々村々を次々に教えながら通り、エルサレムへの旅を続けられた。

23 すると、「主よ。救われる者は少ないのですか。」と言う人があった。イエスは、 人々に言われた。

24 「努力して狭い門からはいりなさい。なぜなら、あなたがたに言いますが、はいろう としても、はいれなくなる人が多いのですから。

25 家の主人が、立ち上がって、戸をしめてしまってからでは、外に立って、『ご主人さ ま。あけてください。』と言って、戸をいくらたたいても、もう主人は、『あなたがたが どこの者か、私は知らない。』と答えるでしょう。

26 すると、あなたがたは、こう言い始めるでしょう。『私たちは、ごいっしょに、食べ

たり飲んだりいたしましたし、私たちの大通りで教えていただきました。』

27 だが、主人はこう言うでしょう。『私はあなたがたがどこの者だか知りません。不

正を行なう者たち。みな出て行きなさい。』

28 神の国にアブラハムやイサクやヤコブや、すべての預言者たちがはいっているの に、あなたがたは外に投げ出されることになったとき、そこで泣き叫んだり、歯ぎしりし たりするのです。

29 人々は、東からも西からも、また南からも北からも来て、神の国で食卓に着きます。

30 いいですか、今しんがりの者があとで先頭になり、いま先頭の者がしんがりになるの です。」

31 ちょうどそのとき、何人かのパリサイ人が近寄って来て、イエスに言った。「ここか ら出てほかの所へ行きなさい。ヘロデがあなたを殺そうと思っています。」

32 イエスは言われた。「行って、あの狐にこう言いなさい。『よく見なさい。わたし は、きょうと、あすとは、悪霊どもを追い出し、病人を直し、三日目に全うされます。

33 だが、わたしは、きょうもあすも次の日も進んで行かなければなりません。なぜな

ら、預言者がエルサレム以外の所で死ぬことはありえないからです。』

34 ああ、エルサレム、エルサレム。預言者たちを殺し、自分に遣わされた人たち を石で打つ者、わたしは、めんどりがひなを翼の下にかばうように、あなたの子らを幾た び集めようとしたことか。それなのに、あなたがたはそれを好まなかった。

35 見なさい。あなたがたの家は荒れ果てたままに残される。わたしはあなたがたに言い ます。『祝福あれ。主の御名によって来られる方に。』とあなたがたの言うときが来るま では、あなたがたは決してわたしを見ることができません。」

1 ある安息日に、食事をしようとして、パリサイ派のある指導者の家にはいられたと き、みんながじっとイエスを見つめていた。

2 そこには、イエスの真正面に、水腫をわずらっている人がいた。

3 イエスは、律法の専門家、パリサイ人たちに、「安息日に病気を直すことは正しいこ とですか、それともよくないことですか。」と言われた。

4 しかし、彼らは黙っていた。それで、イエスはその人を抱いて直してやり、そして お帰しになった。

5 それから、彼らに言われた。「自分の息子や牛が井戸に落ちたのに、安息日だからと いって、すぐに引き上げてやらない者があなたがたのうちにいるでしょうか。」

6 彼らは答えることができなかった。

7 招かれた人々が上座を選んでいる様子に気づいておられたイエスは、彼らにたとえ を話された。

8 「婚礼の披露宴に招かれたときには、上座にすわってはいけません。あなたより身

分の高い人が、招かれているかもしれないし、

9 あなたやその人を招いた人が来て、『この人に席を譲ってください。』とあなた に言うなら、そのときあなたは恥をかいて、末席に着かなければならないでしょう。

10 招かれるようなことがあって、行ったなら、末席に着きなさい。そうしたら、あなた を招いた人が来て、『どうぞもっと上席にお進みください。』と言うでしょう。そのとき は、満座の中で面目を施すことになります。

11 なぜなら、だれでも自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされるか らです。」

12 また、イエスは、自分を招いてくれた人にも、こう話された。「昼食や夕食のふるま いをするなら、友人、兄弟、親族、近所の金持ちなどを呼んではいけません。でないと、 今度は彼らがあなたを招いて、お返しすることになるからです。

13 祝宴を催すばあいには、むしろ、貧しい人、不具の人、足なえ、盲人たちを招きなさ い。

14 その人たちはお返しができないので、あなたは幸いです。義人の復活のときお返し を受けるからです。」

15 イエスといっしょに食卓に着いていた客のひとりはこれを聞いて、イエスに、 「神の国で食事する人は、何と幸いなことでしょう。」と言った。

16 するとイエスはこう言われた。 「ある人が盛大な宴会を催し、大ぜいの人を招いた。

17 宴会の時刻になったのでしもべをやり、招いておいた人々に、『さあ、おいでくださ い。もうすっかり、用意ができましたから。』と言わせた。

18 ところが、みな同じように断わり始めた。最初の人はこう言った。『畑を買ったの で、どうしても見に出かけなければなりません。すみませんが、お断わりさせていただき

ます。』

19 もうひとりはこう言った。『五くびきの牛を買ったので、それをためしに行くところ

です。すみませんが、お断わりさせていただきます。』

20 また、別の人はこう言った。『結婚したので、行くことができません。』

21 しもべは帰って、このことを主人に報告した。すると、おこった主人は、そのしもべ に言った。『急いで町の大通りや路地に出て行って、貧しい人や、不具の人や、盲人や、

足なえをここに連れて来なさい。』

22 しもべは言った。『ご主人さま。仰せのとおりにいたしました。でも、まだ席があり

ます。』

23 主人は言った。『街道や垣根のところに出かけて行って、この家がいっぱいになるよ うに、無理にでも人々を連れて来なさい。

24 言っておくが、あの招待されていた人たちの中で、私の食事を味わう者は、ひとりも いないのです。』」

25 さて、大ぜいの群衆が、イエスといっしょに歩いていたが、イエスは彼らのほう に向いて言われた。

26 「わたしのもとに来て、自分の父、母、妻、子、兄弟、姉妹、そのうえ自分のいのち までも憎まない者は、わたしの弟子になることができません。

27 自分の十字架を負ってわたしについて来ない者は、わたしの弟子になることはできま せん。

28 塔を築こうとするとき、まずすわって、完成に十分な金があるかどうか、その費 用を計算しない者が、あなたがたのうちにひとりでもあるでしょうか。

29 基礎を築いただけで完成できなかったら、見ていた人はみな彼をあざ笑って、

30 『この人は、建て始めはしたものの、完成できなかった。』と言うでしょう。

31 また、どんな王でも、ほかの王と戦いを交えようとするときは、二万人を引き連れ て向かって来る敵を、一万人で迎え撃つことができるかどうかを、まずすわって、考えず にいられましょうか。

32 もし見込みがなければ、敵がまだ遠くに離れている間に、使者を送って講和を求める でしょう。

33 そういうわけで、あなたがたはだれでも、自分の財産全部を捨てないでは、わたし の弟子になることはできません。

34 ですから、塩は良いものですが、もしその塩が塩けをなくしたら、何によってそれ に味をつけるのでしょうか。

35 土地にも肥やしにも役立たず、外に投げ捨てられてしまいます。聞く耳のあ る人は聞きなさい。」

1 さて、取税人、罪人たちがみな、イエスの話を聞こうとして、みもとに近寄っ て来た。

2 すると、パリサイ人、律法学者たちは、つぶやいてこう言った。「この人は、罪人た ちを受け入れて、食事までいっしょにする。」

3 そこでイエスは、彼らにこのようなたとえを話された。

4 「あなたがたのうちに羊を百匹持っている人がいて、そのうちの一匹をなくした ら、その人は九十九匹を野原に残して、いなくなった一匹を見つけるまで捜し歩かない でしょうか。

5 見つけたら、大喜びでその羊をかついで、

6 帰って来て、友だちや近所の人たちを呼び集め、『いなくなった羊を見つけましたか ら、いっしょに喜んでください。』と言うでしょう。

7 あなたがたに言いますが、それと同じように、ひとりの罪人が悔い改めるなら、 悔い改める必要のない九十九人の正しい人にまさる喜びが天にあるのです。

8 また、女の人が銀貨を十枚持っていて、もしその一枚をなくしたら、あかりをつけ、 家を掃いて、見つけるまで念入りに捜さないでしょうか。

9 見つけたら、友だちや近所の女たちを呼び集めて、『なくした銀貨を見つけましたか ら、いっしょに喜んでください。』と言うでしょう。

10 あなたがたに言いますが、それと同じように、ひとりの罪人が悔い改めるなら、 神の御使いたちに喜びがわき起こるのです。」

11 またこう話された。 「ある人に息子がふたりあった。

12 弟が父に、『おとうさん。私に財産の分け前を下さい。』と言った。それで父は、身 代をふたりに分けてやった。

13 それから、幾日もたたぬうちに、弟は、何もかもまとめて遠い国に旅立った。そし て、そこで放蕩して湯水のように財産を使ってしまった。

14 何もかも使い果たしたあとで、その国に大ききんが起こり、彼は食べるにも困り始め た。

15 それで、その国のある人のもとに身を寄せたところ、その人は彼を畑にやって、 豚の世話をさせた。

16 彼は豚の食べるいなご豆で腹を満たしたいほどであったが、だれひとり彼に与えよう とはしなかった。

17 しかし、我に返ったとき彼は、こう言った。『父のところには、パンのあり余ってい る雇い人が大ぜいいるではないか。それなのに、私はここで、飢え死にしそうだ。

18 立って、父のところに行って、こう言おう。「おとうさん。私は天に対し て罪を犯し、またあなたの前に罪を犯しました。

19 もう私は、あなたの子と呼ばれる資格はありません。雇い人のひとりにしてくださ

い。」』

20 こうして彼は立ち上がって、自分の父のもとに行った。ところが、まだ家までは遠か ったのに、父親は彼を見つけ、かわいそうに思い、走り寄って彼を抱き、口づけした。

21 息子は言った。『おとうさん。私は天に対して罪を犯し、またあなたの前に罪を犯し

ました。もう私は、あなたの子と呼ばれる資格はありません。』

22 ところが父親は、しもべたちに言った。『急いで一番良い着物を持って来て、こ の子に着せなさい。それから、手に指輪をはめさせ、足にくつをはかせなさい。

23 そして肥えた子牛を引いて来てほふりなさい。食べて祝おうではないか。

24 この息子は、死んでいたのが生き返り、いなくなっていたのが見つかったのだか ら。』そして彼らは祝宴を始めた。

25 ところで、兄息子は畑にいたが、帰って来て家に近づくと、音楽や踊りの音が聞こえ

て来た。それで、

26 しもべのひとりを呼んで、これはいったい何事かと尋ねると、

27 しもべは言った。『弟さんがお帰りになったのです。無事な姿をお迎えしたというの

で、おとうさんが、肥えた子牛をほふらせなさったのです。』

28 すると、兄はおこって、家にはいろうともしなかった。それで、父が出て来て、いろ いろなだめてみた。

29 しかし兄は父にこう言った。『ご覧なさい。長年の間、私はおとうさんに仕え、戒め を破ったことは一度もありません。その私には、友だちと楽しめと言って、子山羊一匹 下さったことがありません。

30 それなのに、遊女におぼれてあなたの身代を食いつぶして帰って来たこのあなたの息

子のためには、肥えた子牛をほふらせなさったのですか。』

31 父は彼に言った。『おまえはいつも私といっしょにいる。私のものは、全部おまえの ものだ。

32 だがおまえの弟は、死んでいたのが生き返って来たのだ。いなくなっていたのが見つ かったのだから、楽しんで喜ぶのは当然ではないか。』」

1 イエスは、弟子たちにも、こういう話をされた。 「ある金持ちにひとりの管理人がいた。この管理人が主人の財産を乱費している、とい う訴えが出された。

2 主人は、彼を呼んで言った。『おまえについてこんなことを聞いたが、何ということ をしてくれたのだ。もう管理を任せておくことはできないから、会計の報告を出しなさ

い。』

3 管理人は心の中で言った。『主人にこの管理の仕事を取り上げられるが、さてどうし よう。土を掘るには力がないし、こじきをするのは恥ずかしいし。

4 ああ、わかった。こうしよう。こうしておけば、いつ管理の仕事をやめさせられて

も、人がその家に私を迎えてくれるだろう。』

5 そこで彼は、主人の債務者たちをひとりひとり呼んで、まず最初の者に、『私の主

人に、いくら借りがありますか。』と言うと、

6 その人は、『油百バテ。』と言った。すると彼は、『さあ、あなたの証文だ。すぐに すわって五十と書きなさい。』と言った。

7 それから、別の人に、『さて、あなたは、いくら借りがありますか。』と言うと、 『小麦百コル。』と言った。彼は、『さあ、あなたの証文だ。八十と書きなさ い。』と言った。

8 この世の子らは、自分たちの世のことについては、光の子らよりも抜けめがないもの なので、主人は、不正な管理人がこうも抜けめなくやったのをほめた。

9 そこで、わたしはあなたがたに言いますが、不正の富で、自分のために友をつくりな さい。そうしておけば、富がなくなったとき、彼らはあなたがたを、永遠の住まい に迎えるのです。

10 小さい事に忠実な人は、大きい事にも忠実であり、小さい事に不忠実な人は、大き い事にも不忠実です。

11 ですから、あなたがたが不正の富に忠実でなかったら、だれがあなたがたに、まこと の富を任せるでしょう。

12 また、あなたがたが他人のものに忠実でなかったら、だれがあなたがたに、あなたが たのものを持たせるでしょう。

13 しもべは、ふたりの主人に仕えることはできません。一方を憎んで他方を愛した り、または一方を重んじて他方を軽んじたりするからです。あなたがたは、神に も仕え、また富にも仕えるということはできません。」

14 さて、金の好きなパリサイ人たちが、一部始終を聞いて、イエスをあざ笑っていた。

15 イエスは彼らに言われた。「あなたがたは、人の前で自分を正しいとする者です。し かし神は、あなたがたの心をご存じです。人間の間であがめられる者は、神の前で憎ま れ、きらわれます。

16 律法と預言者はヨハネまでです。それ以来、神の国の福音は宣べ伝えられ、だれもか れも、無理にでも、これにはいろうとしています。

17 しかし律法の一画が落ちるよりも、天地の滅びるほうがやさしいのです。

18 だれでも妻を離別してほかの女と結婚する者は、姦淫を犯す者であり、また、夫か ら離別された女と結婚する者も、姦淫を犯す者です。

19 ある金持ちがいた。いつも紫の衣や細布を着て、毎日ぜいたくに遊び暮らしていた。

20 ところが、その門前にラザロという全身おできの貧乏人が寝ていて、

21 金持ちの食卓から落ちる物で腹を満たしたいと思っていた。犬もやって来ては、彼の おできをなめていた。

22 さて、この貧乏人は死んで、御使いたちによってアブラハムのふところに連れて行か れた。金持ちも死んで葬られた。

23 その金持ちは、ハデスで苦しみながら目を上げると、アブラハムが、はるかかなた に見えた。しかも、そのふところにラザロが見えた。

24 彼は叫んで言った。『父アブラハムさま。私をあわれんでください。ラザロが指 先を水に浸して私の舌を冷やすように、ラザロをよこしてください。私はこの炎の中で、

苦しくてたまりません。』

25 アブラハムは言った。『子よ。思い出してみなさい。おまえは生きてい る間、良い物を受け、ラザロは生きている間、悪い物を受けていました。しかし、今ここ で彼は慰められ、おまえは苦しみもだえているのです。

26 そればかりでなく、私たちとおまえたちの間には、大きな淵があります。ここからそ ちらへ渡ろうとしても、渡れないし、そこからこちらへ越えて来ることもできないので

す。』

27 彼は言った。『父よ。ではお願いです。ラザロを私の父の家に送ってください。

28 私には兄弟が五人ありますが、彼らまでこんな苦しみの場所に来ることのないよう

に、よく言い聞かせてください。』

29 しかしアブラハムは言った。『彼らには、モーセと預言者があります。その言うこと

を聞くべきです。』

30 彼は言った。『いいえ、父アブラハム。もし、だれかが死んだ者の中から彼らのとこ

ろに行ってやったら、彼らは悔い改めるに違いありません。』

31 アブラハムは彼に言った。『もしモーセと預言者との教えに耳を傾けないのなら、た といだれかが死人の中から生き返っても、彼らは聞き入れはしない。』」

1 イエスは弟子たちにこう言われた。「つまずきが起こるのは避けられない。だが、つ まずきを起こさせる者は、忌まわしいものです。

2 この小さい者たちのひとりに、つまずきを与えるようであったら、そんな者は石 臼を首にゆわえつけられて、海に投げ込まれたほうがましです。

3 気をつけていなさい。もし兄弟が罪を犯したなら、彼を戒めなさい。そして悔い改め れば、赦しなさい。

4 かりに、あなたに対して一日に七度罪を犯しても、『悔い改めます。』と言って七 度あなたのところに来るなら、赦してやりなさい。」

5 使徒たちは主に言った。「私たちの信仰を増してください。」

6 しかし主は言われた。「もしあなたがたに、からし種ほどの信仰があったなら、こ の桑の木に、『根こそぎ海の中に植われ。』と言えば、言いつけどおりになるのです。

7 ところで、あなたがたのだれかに、耕作か羊飼いをするしもべがいるとして、そのし もべが野らから帰って来たとき、『さあ、さあ、ここに来て、食事をしなさい。』としも べに言うでしょうか。

8 かえって、『私の食事の用意をし、帯を締めて私の食事が済むまで給仕しなさい。あ とで、自分の食事をしなさい。』と言わないでしょうか。

9 しもべが言いつけられたことをしたからといって、そのしもべに感謝するでしょうか。

10 あなたがたもそのとおりです。自分に言いつけられたことをみな、してしまったら、 『私たちは役に立たないしもべです。なすべきことをしただけです。』と言いなさい。」

11 そのころイエスはエルサレムに上られる途中、サマリヤとガリラヤの境を通られた。

12 ある村にはいると、十人のらい病人がイエスに出会った。彼らは遠く離れた所に立っ

て、

13 声を張り上げて、「イエスさま、先生。どうぞあわれんでください。」と言った。

14 イエスはこれを見て、言われた。「行きなさい。そして自分を祭司に見せなさい。」 彼らは行く途中でいやされた。

15 そのうちのひとりは、自分のいやされたことがわかると、大声で神をほめたたえなが

ら引き返して来て、

16 イエスの足もとにひれ伏して感謝した。彼はサマリヤ人であった。

17 そこでイエスは言われた。「十人いやされたのではないか。九人はどこにいるのか。

18 神をあがめるために戻って来た者は、この外国人のほかには、だれもいないのか。」

19 それからその人に言われた。「立ち上がって、行きなさい。あなたの信仰が、あなた を直したのです。」

20 さて、神の国はいつ来るのか、とパリサイ人たちに尋ねられたとき、イエスは答え て言われた。「神の国は、人の目で認められるようにして来るものではありません。

21 『そら、ここにある。』とか、『あそこにある。』とか言えるようなものではありま せん。いいですか。神の国は、あなたがたのただ中にあるのです。」

22 イエスは弟子たちに言われた。「人の子の日を一日でも見たいと願っても、見られな い時が来ます。

23 人々が『こちらだ。』とか、『あちらだ。』とか言っても行ってはなりません。あと を追いかけてはなりません。

24 いなずまが、ひらめいて、天の端から天の端へと輝くように、人の子は、 人の子の日には、ちょうどそのようであるからです。

25 しかし、人の子はまず、多くの苦しみを受け、この時代に捨てられなければなりませ ん。

26 人の子の日に起こることは、ちょうど、ノアの日に起こったことと同様です。

27 ノアが箱舟にはいるその日まで、人々は、食べたり、飲んだり、めとったり、とつい だりしていたが、洪水が来て、すべての人を滅ぼしてしまいました。

28 また、ロトの時代にあったことと同様です。人々は食べたり、飲んだり、売ったり、

買ったり、植えたり、建てたりしていたが、

29 ロトがソドムから出て行くと、その日に、火と硫黄が天から降って、すべて の人を滅ぼしてしまいました。

30 人の子の現われる日にも、全くそのとおりです。

31 その日には、屋上にいる者は家に家財があっても、取り出しに降りてはいけません。 同じように、畑にいる者も家に帰ってはいけません。

32 ロトの妻を思い出しなさい。

33 自分のいのちを救おうと努める者はそれを失い、それを失う者はいのちを保ちます。

34 あなたがたに言いますが、その夜、同じ寝台で男がふたり寝ていると、ひとりは取ら れ、他のひとりは残されます。

35 女がふたりいっしょに臼をひいていると、ひとりは取られ、他のひとりは残されま す。」 36-37 弟子たちは答えて言った。「主よ。どこでですか。」主は言われた。「死体のあ る所、そこに、はげたかも集まります。」

1 いつでも祈るべきであり、失望してはならないことを教えるために、イエスは彼らに たとえを話された。

2 「ある町に、神を恐れず、人を人とも思わない裁判官がいた。

3 その町に、ひとりのやもめがいたが、彼のところにやって来ては、『私の相手をさば いて、私を守ってください。』と言っていた。

4 彼は、しばらくは取り合わないでいたが、後には心ひそかに『私は神を恐れ

ず人を人とも思わないが、

5 どうも、このやもめは、うるさくてしかたがないから、この女のために裁判をしてや ることにしよう。でないと、ひっきりなしにやって来てうるさくてしかたがな い。』と言った。」

6 主は言われた。「不正な裁判官の言っていることを聞きなさい。

7 まして神は、夜昼神を呼び求めている選民のためにさばきをつけないで、いつまでも そのことを放っておかれることがあるでしょうか。

8 あなたがたに言いますが、神は、すみやかに彼らのために正しいさばきをしてくださ います。しかし、人の子が来たとき、はたして地上に信仰が見られるでしょうか。」

9 自分を義人だと自任し、他の人々を見下している者たちに対しては、イエスはこのよ うなたとえを話された。

10 「ふたりの人が、祈るために宮に上った。ひとりはパリサイ人で、もうひとりは取税 人であった。

11 パリサイ人は、立って、心の中でこんな祈りをした。『神よ。私はほかの人々のよう にゆする者、不正な者、姦淫する者ではなく、ことにこの取税人のようではないことを、 感謝します。

12 私は週に二度断食し、自分の受けるものはみな、その十分の一をささげておりま

す。』

13 ところが、取税人は遠く離れて立ち、目を天に向けようともせず、自分の胸をたたい

て言った。『神さま。こんな罪人の私をあわれんでください。』

14 あなたがたに言うが、この人のほうが、前の人よりも、義と認められ、家に帰っ て行きました。なぜなら、だれでも自分を高くする者は低くされ、自分を低くす る者は高くされるからです。」

15 イエスにさわっていただこうとして、人々がその幼子たちを、みもとに連れ て来た。ところが、弟子たちがそれを見てしかった。

16 しかしイエスは、幼子たちを呼び寄せて、こう言われた。「子どもたちをわたしのと ころに来させなさい。止めてはいけません。神の国は、このような者たちのものです。

17 まことに、あなたがたに告げます。子どものように神の国を受け入れる者でなけれ ば、決してそこに、はいることはできません。」

18 またある役人が、イエスに質問して言った。「尊い先生。私は何をしたら、永遠のい のちを自分のものとして受けることができるでしょうか。」

19 イエスは彼に言われた。「なぜ、わたしを『尊い』と言うのですか。尊い方は、神お ひとりのほかにはだれもありません。

20 戒めはあなたもよく知っているはずです。『姦淫してはならない。殺してはならな い。盗んではならない。偽証を立ててはならない。父と母を敬え。』」

21 すると彼は言った。「そのようなことはみな、小さい時から守っております。」

22 イエスはこれを聞いて、その人に言われた。「あなたには、まだ一つだけ欠けたもの があります。あなたの持ち物を全部売り払い、貧しい人々に分けてやりなさい。そうすれ ば、あなたは天に宝を積むことになります。そのうえで、わたしについて来なさい。」

23 すると彼は、これを聞いて、非常に悲しんだ。たいへんな金持ちだったからである。

24 イエスは彼を見てこう言われた。「裕福な者が神の国にはいることは、何とむずかし いことでしょう。

25 金持ちが神の国にはいるよりは、らくだが針の穴を通るほうがもっとやさしい。」

26 これを聞いた人々が言った。「それでは、だれが救われることができるでしょう。」

27 イエスは言われた。「人にはできないことが、神にはできるのです。」

28 すると、ペテロが言った。「ご覧ください。私たちは自分の家を捨てて従ってまいり ました。」

29 イエスは彼らに言われた。「まことに、あなたがたに告げます。神の国のために、

家、妻、兄弟、両親、子どもを捨てた者で、だれひとりとして、

30 この世にあってその幾倍かを受けない者はなく、後の世で永遠のいのちを受けな い者はありません。」

31 さてイエスは、十二弟子をそばに呼んで、彼らに話された。「さあ、これから、わた したちはエルサレムに向かって行きます。人の子について預言者たちが書いているすべて のことが実現されるのです。

32 人の子は異邦人に引き渡され、そして彼らにあざけられ、はずかしめられ、つばきを かけられます。

33 彼らは人の子をむちで打ってから殺します。しかし、人の子は三日目によみがえりま す。」

34 しかし弟子たちには、これらのことが何一つわからなかった。彼らには、このことば は隠されていて、話された事が理解できなかった。

35 イエスがエリコに近づかれたころ、ある盲人が、道ばたにすわり、物ごいをしてい た。

36 群衆が通って行くのを耳にして、これはいったい何事ですか、と尋ねた。

37 ナザレのイエスがお通りになるのだ、と知らせると、

38 彼は大声で、「ダビデの子のイエスさま。私をあわれんでください。」と言った。

39 彼を黙らせようとして、先頭にいた人々がたしなめたが、盲人は、ますます「ダビデ の子よ。私をあわれんでください。」と叫び立てた。

40 イエスは立ち止まって、彼をそばに連れて来るように言いつけられた。

41 彼が近寄って来たので、「わたしに何をしてほしいのか。」と尋ねられると、彼は、 「主よ。目が見えるようになることです。」と言った。

42 イエスが彼に、「見えるようになれ。あなたの信仰があなたを直したので

す。」と言われると、

43 彼はたちどころに目が見えるようになり、神をあがめながらイエスについて行っ た。これを見て民はみな神を賛美した。

1 それからイエスは、エリコにはいって、町をお通りになった。

2 ここには、ザアカイという人がいたが、彼は取税人のかしらで、金持ちであった。

3 彼は、イエスがどんな方か見ようとしたが、背が低かったので、群衆のために見るこ とができなかった。

4 それで、イエスを見るために、前方に走り出て、いちじく桑の木に登った。ちょうど イエスがそこを通り過ぎようとしておられたからである。

5 イエスは、ちょうどそこに来られて、上を見上げて彼に言われた。「ザアカイ。急い で降りて来なさい。きょうは、あなたの家に泊まることにしてあるから。」

6 ザアカイは、急いで降りて来て、そして大喜びでイエスを迎えた。

7 これを見て、みなは、「あの方は罪人のところに行って客となられた。」と言ってつ ぶやいた。

8 ところがザアカイは立って、主に言った。「主よ。ご覧ください。私の財産の半 分を貧しい人たちに施します。また、だれからでも、私がだまし取った物は、四倍にし て返します。」

9 イエスは、彼に言われた。「きょう、救いがこの家に来ました。この人もアブラハム の子なのですから。

10 人の子は、失われた人を捜して救うために来たのです。」

11 人々がこれらのことに耳を傾けているとき、イエスは、続けて一つのたとえを話され た。それは、イエスがエルサレムに近づいておられ、そのため人々は神の国がすぐにで も現われるように思っていたからである。

12 それで、イエスはこう言われた。 「ある身分の高い人が、遠い国に行った。王位を受けて帰るためであった。

13 彼は自分の十人のしもべを呼んで、十ミナを与え、彼らに言った。『私が帰るま

で、これで商売しなさい。』

14 しかし、その国民たちは、彼を憎んでいたので、あとから使いをやり、『この人に、 私たちの王にはなってもらいたくありません。』と言った。

15 さて、彼が王位を受けて帰って来たとき、金を与えておいたしもべたちがどんな商 売をしたかを知ろうと思い、彼らを呼び出すように言いつけた。

16 さて、最初の者が現われて言った。『ご主人さま。あなたの一ミナで、十ミナをもう

けました。』

17 主人は彼に言った。『よくやった。良いしもべだ。あなたはほんの小さな事にも忠

実だったから、十の町を支配する者になりなさい。』

18 二番目の者が来て言った。『ご主人さま。あなたの一ミナで、五ミナをもうけまし

た。』

19 主人はこの者にも言った。『あなたも五つの町を治めなさい。』

20 もうひとりが来て言った。『ご主人さま。さあ、ここにあなたの一ミナがございま す。私はふろしきに包んでしまっておきました。

21 あなたは計算の細かい、きびしい方ですから、恐ろしゅうございました。あなたは お預けにならなかったものをも取り立て、お蒔きにならなかったものをも刈り取る方です

から。』

22 主人はそのしもべに言った。『悪いしもべだ。私はあなたのことばによって、あなた をさばこう。あなたは、私が預けなかったものを取り立て、蒔かなかったものを刈り取る きびしい人間だと知っていた、というのか。

23 だったら、なぜ私の金を銀行に預けておかなかったのか。そうすれば私は帰って来た

ときに、それを利息といっしょに受け取れたはずだ。』

24 そして、そばに立っていた者たちに言った。『その一ミナを彼から取り上げて、十ミ

ナ持っている人にやりなさい。』

25 すると彼らは、『ご主人さま。その人は十ミナも持っています。』と言った。

26 彼は言った。『あなたがたに言うが、だれでも持っている者は、さらに与えられ、 持たない者からは、持っている物までも取り上げられるのです。

27 ただ、私が王になるのを望まなかったこの敵どもは、みなここに連れて来て、 私の目の前で殺してしまえ。』」

28 これらのことを話して後、イエスは、さらに進んで、エルサレムへと上って行かれ た。

29 オリーブという山のふもとのベテパゲとベタニヤに近づかれたとき、イエスはふたり

の弟子を使いに出して、

30 言われた。「向こうの村に行きなさい。そこにはいると、まだだれも乗ったことのな い、ろばの子がつないであるのに気がつくでしょう。それをほどいて連れて来なさい。

31 もし、『なぜ、ほどくのか。』と尋ねる人があったら、こう言いなさい。『主がお入 用なのです。』」

32 使いに出されたふたりが行って見ると、イエスが話されたとおりであった。

33 彼らがろばの子をほどいていると、その持ち主が、「なぜ、このろばの子をほどくの か。」と彼らに言った。

34 弟子たちは、「主がお入用なのです。」と言った。

35 そしてふたりは、それをイエスのもとに連れて来た。そして、そのろばの子の上に自 分たちの上着を敷いて、イエスをお乗せした。

36 イエスが進んで行かれると、人々は道に自分たちの上着を敷いた。

37 イエスがすでにオリーブ山のふもとに近づかれたとき、弟子たちの群れはみな、自

分たちの見たすべての力あるわざのことで、喜んで大声に神を賛美し始め、

38 こう言った。 「祝福あれ。 主の御名によって来られる王に。 天には平和。 栄光は、いと高き所に。」

39 するとパリサイ人のうちのある者たちが、群衆の中から、イエスに向かって、「先 生。お弟子たちをしかってください。」と言った。

40 イエスは答えて言われた。「わたしは、あなたがたに言います。もしこの人たち が黙れば、石が叫びます。」

41 エルサレムに近くなったころ、都を見られたイエスは、その都のために泣いて、

42 言われた。「おまえも、もし、この日のうちに、平和のことを知っていたのなら。し かし今は、そのことがおまえの目から隠されている。

43 やがておまえの敵が、おまえに対して塁を築き、回りを取り巻き、四方か

ら攻め寄せ、

44 そしておまえとその中の子どもたちを地にたたきつけ、おまえの中で、一つの石もほ かの石の上に積まれたままでは残されない日が、やって来る。それはおまえが、神の訪れ の時を知らなかったからだ。」

45 宮にはいられたイエスは、商売人たちを追い出し始め、

46 こう言われた。「『わたしの家は、祈りの家でなければならない。』と書いてあ る。それなのに、あなたがたはそれを強盗の巣にした。」

47 イエスは毎日、宮で教えておられた。祭司長、律法学者、民のおもだった者たち

は、イエスを殺そうとねらっていたが、

48 どうしてよいかわからなかった。民衆がみな、熱心にイエスの話に耳を傾けていたか らである。

1 イエスは宮で民衆を教え、福音を宣べ伝えておられたが、ある日、祭司長、律法学

者たちが、長老たちといっしょにイエスに立ち向かって、

2 イエスに言った。「何の権威によって、これらのことをしておられるのですか。あな たにその権威を授けたのはだれですか。それを言ってください。」

3 そこで答えて言われた。「わたしも一言尋ねますから、それに答えなさい。

4 ヨハネのバプテスマは、天から来たのですか、人から出たのですか。」

5 すると彼らは、こう言って、互いに論じ合った。「もし、天から、と言えば、それな らなぜ、彼を信じなかったか、と言うだろう。

6 しかし、もし、人から、と言えば、民衆がみなで私たちを石で打ち殺すだろう。ヨハ ネを預言者と信じているのだから。」

7 そこで、「どこからか知りません。」と答えた。

8 するとイエスは、「わたしも、何の権威によってこれらのことをするのか、あなたが たに話すまい。」と言われた。

9 また、イエスは、民衆にこのようなたとえを話された。 「ある人がぶどう園を造り、それを農夫たちに貸して、長い旅に出た。

10 そして季節になったので、ぶどう園の収穫の分けまえをもらうために、農夫たちのと ころへひとりのしもべを遣わした。ところが、農夫たちは、そのしもべを袋だたきにし、 何も持たせないで送り帰した。

11 そこで、別のしもべを遣わしたが、彼らは、そのしもべも袋だたきにし、はずかしめ たうえで、何も持たせないで送り帰した。

12 彼はさらに三人目のしもべをやったが、彼らは、このしもべにも傷を負わせ て追い出した。

13 ぶどう園の主人は言った。『どうしたものか。よし、愛する息子を送ろう。彼ら

も、この子はたぶん敬ってくれるだろう。』

14 ところが、農夫たちはその息子を見て、議論しながら言った。『あれはあと取り

だ。あれを殺そうではないか。そうすれば、財産はこちらのものだ。』

15 そして、彼をぶどう園の外に追い出して、殺してしまった。 こうなると、ぶどう園の主人は、どうするでしょう。

16 彼は戻って来て、この農夫どもを打ち滅ぼし、ぶどう園をほかの人たちに与えてしま います。」これを聞いた民衆は、「そんなことがあってはなりません。」と言った。

17 イエスは、彼らを見つめて言われた。「では、

『家を建てる者たちの見捨てた石、

それが礎の石となった。』 と書いてあるのは、何のことでしょう。

18 この石の上に落ちれば、だれでも粉々に砕け、またこの石が人の上に落ちれば、そ の人を粉みじんに飛び散らしてしまうのです。」

19 律法学者、祭司長たちは、イエスが自分たちをさしてこのたとえを話されたと気づい たので、この際イエスに手をかけて捕えようとしたが、やはり民衆を恐れた。

20 さて、機会をねらっていた彼らは、義人を装った間者を送り、イエスのことば を取り上げて、総督の支配と権威にイエスを引き渡そう、と計った。

21 その間者たちは、イエスに質問して言った。「先生。私たちは、あなたがお話しにな り、お教えになることは正しく、またあなたは分け隔てなどせず、真理に基づい て神の道を教えておられることを知っています。

22 ところで、私たちが、カイザルに税金を納めることは、律法にかなっていることでし ょうか。かなっていないことでしょうか。」

23 イエスはそのたくらみを見抜いて彼らに言われた。

24 「デナリ銀貨をわたしに見せなさい。これはだれの肖像ですか。だれの銘ですか。」 彼らは、「カイザルのです。」と言った。

25 すると彼らに言われた。「では、カイザルのものはカイザルに返しなさい。そし て神のものは神に返しなさい。」

26 彼らは、民衆の前でイエスのことばじりをつかむことができず、お答えに驚嘆し て黙ってしまった。

27 ところが、復活があることを否定するサドカイ人のある者たちが、イエスのところ

に来て、質問して、

28 こう言った。「先生。モーセは私たちのためにこう書いています。『もし、あ る人の兄が妻をめとって死に、しかも子がなかったばあいは、その弟はその女を妻にし

て、兄のための子をもうけなければならない。』

29 ところで、七人の兄弟がいました。長男は妻をめとりましたが、子どもがなくて死に ました。

30 次男も、

31 三男もその女をめとり、七人とも同じようにして、子どもを残さずに死にました。

32 あとで、その女も死にました。

33 すると復活の際、その女はだれの妻になるでしょうか。七人ともその女を妻としたの ですが。」

34 イエスは彼らに言われた。「この世の子らは、めとったり、とついだりするが、

35 次の世にはいるのにふさわしく、死人の中から復活するのにふさわしい、と認められ る人たちは、めとることも、とつぐこともありません。

36 彼らはもう死ぬことができないからです。彼らは御使いのようであり、また、復 活の子として神の子どもだからです。

37 それに、死人がよみがえることについては、モーセも柴の個所で、主を、『アブラハ ムの神、イサクの神、ヤコブの神。』と呼んで、このことを示しました。

38 神は死んだ者の神ではありません。生きている者の神です。というのは、神に対して は、みなが生きているからです。」

39 律法学者のうちのある者たちが答えて、「先生。りっぱなお答えです。」と言った。

40 彼らはもうそれ以上何も質問する勇気がなかった。

41 すると、イエスが彼らに言われた。「どうして人々は、キリストをダビデの子と言う のですか。

42 ダビデ自身が詩篇の中でこう言っています。 『主は私の主に言われた。

43 「わたしが、あなたの敵を

あなたの足台とする時まで、

わたしの右の座に着いていなさい。」』

44 こういうわけで、ダビデがキリストを主と呼んでいるのに、どうしてキリストがダビ デの子でしょう。」

45 また、民衆がみな耳を傾けているときに、イエスは弟子たちにこう言われた。

46 「律法学者たちには気をつけなさい。彼らは、長い衣をまとって歩き回ったり、広 場であいさつされたりすることが好きで、また会堂の上席や宴会の上座が好きです。

47 また、やもめの家を食いつぶし、見えを飾るために長い祈りをします。こういう人た ちは人一倍きびしい罰を受けるのです。」

1 さてイエスが、目を上げてご覧になると、金持ちたちが献金箱に献金を投げ入れてい た。

2 また、ある貧しいやもめが、そこにレプタ銅貨二つを投げ入れているのをご覧になっ た。

3 それでイエスは言われた。「わたしは真実をあなたがたに告げます。この貧しいやも めは、どの人よりもたくさん投げ入れました。

4 みなは、あり余る中から献金を投げ入れたのに、この女は、乏しい中から、持ってい た生活費の全部を投げ入れたからです。」

5 宮がすばらしい石や奉納物で飾ってあると話していた人々があった。するとイエスは こう言われた。

6 「あなたがたの見ているこれらの物について言えば、石がくずされずに積まれたま ま残ることのない日がやって来ます。」

7 彼らは、イエスに質問して言った。「先生。それでは、これらのことは、いつ起こる のでしょう。これらのことが起こるときは、どんな前兆があるのでしょう。」

8 イエスは言われた。「惑わされないように気をつけなさい。わたしの名を名の る者が大ぜい現われ、『私がそれだ。』とか『時は近づいた。』とか言います。そん な人々のあとについて行ってはなりません。

9 戦争や暴動のことを聞いても、こわがってはいけません。それは、初めに必ず起こる ことです。だが、終わりは、すぐには来ません。」

10 それから、イエスは彼らに言われた。「民族は民族に、国は国に敵対して立ち上が

り、

11 大地震があり、方々に疫病やききんが起こり、恐ろしいことや天からのすさまじい前 兆が現われます。

12 しかし、これらのすべてのことの前に、人々はあなたがたを捕えて迫害し、会 堂や牢に引き渡し、わたしの名のために、あなたがたを王たちや総督たちの前に引き出す でしょう。

13 それはあなたがたのあかしをする機会となります。

14 それで、どう弁明するかは、あらかじめ考えないことに、心を定めておきなさい。

15 どんな反対者も、反論もできず、反証もできないようなことばと知恵を、わたしがあ なたがたに与えます。

16 しかしあなたがたは、両親、兄弟、親族、友人たちにまで裏切られます。中には殺さ

れる者もあり、

17 わたしの名のために、みなの者に憎まれます。

18 しかし、あなたがたの髪の毛一筋も失われることはありません。

19 あなたがたは、忍耐によって、自分のいのちを勝ち取ることができます。

20 しかし、エルサレムが軍隊に囲まれるのを見たら、そのときには、その滅亡が近づい たことを悟りなさい。

21 そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げなさい。都の中にいる人々は、そこから立ち のきなさい。いなかにいる者たちは、都にはいってはいけません。

22 これは、書かれているすべてのことが成就する報復の日だからです。

23 その日、悲惨なのは身重の女と乳飲み子を持つ女です。この地に大きな苦 難が臨み、この民に御怒りが臨むからです。

24 人々は、剣の刃に倒れ、捕虜となってあらゆる国に連れて行かれ、異邦人の時の終わ るまで、エルサレムは異邦人に踏み荒らされます。

25 そして、日と月と星には、前兆が現われ、地上では、諸国の民が、海と波が荒れどよ

めくために不安に陥って悩み、

26 人々は、その住むすべての所を襲おうとしていることを予想して、恐ろしさのあま り気を失います。天の万象が揺り動かされるからです。

27 そのとき、人々は、人の子が力と輝かしい栄光を帯びて雲に乗って来るのを見るので す。

28 これらのことが起こり始めたなら、からだをまっすぐにし、頭を上に上げなさい。 贖いが近づいたのです。」

29 それからイエスは、人々にたとえを話された。「いちじくの木や、すべての木を見な さい。

30 木の芽が出ると、それを見て夏の近いことがわかります。

31 そのように、これらのことが起こるのを見たら、神の国は近いと知りなさい。

32 まことに、あなたがたに告げます。すべてのことが起こってしまうまでは、この時 代は過ぎ去りません。

33 この天地は滅びます。しかし、わたしのことばは決して滅びることがありません。

34 あなたがたの心が、放蕩や深酒やこの世の煩いのために沈み込んでいるところに、そ の日がわなのように、突然あなたがたに臨むことのないように、よく気をつけていなさ い。

35 その日は、全地の表に住むすべての人に臨むからです。

36 しかし、あなたがたは、やがて起ころうとしているこれらすべてのことからのがれ、 人の子の前に立つことができるように、いつも油断せずに祈っていなさい。」

37 さてイエスは、昼は宮で教え、夜はいつも外に出てオリーブという山で過ごされた。

38 民衆はみな朝早く起きて、教えを聞こうとして、宮におられるイエスのもとに集まっ て来た。

1 さて、過越の祭りといわれる、種なしパンの祝いが近づいていた。

2 祭司長、律法学者たちは、イエスを殺すための良い方法を捜していた。というのは、 彼らは民衆を恐れていたからである。

3 さて、十二弟子のひとりで、イスカリオテと呼ばれるユダに、サタンがはいった。

4 ユダは出かけて行って、祭司長たちや宮の守衛長たちと、どのようにしてイエス を彼らに引き渡そうかと相談した。

5 彼らは喜んで、ユダに金をやる約束をした。

6 ユダは承知した。そして群衆のいないときにイエスを彼らに引き渡そうと機会をねら っていた。

7 さて、過越の小羊のほふられる、種なしパンの日が来た。

8 イエスは、こう言ってペテロとヨハネを遣わされた。「わたしたちの過越の食事がで きるように、準備をしに行きなさい。」

9 彼らはイエスに言った。「どこに準備しましょうか。」

10 イエスは言われた。「町にはいると、水がめを運んでいる男に会うから、その人がは いる家にまでついて行きなさい。

11 そして、その家の主人に、『弟子たちといっしょに過越の食事をする客間はどこ か、と先生があなたに言っておられる。』と言いなさい。

12 すると主人は、席が整っている二階の大広間を見せてくれます。そこで準備をしなさ い。」

13 彼らが出かけて見ると、イエスの言われたとおりであった。それで、彼らは過越の食 事の用意をした。

14 さて時間になって、イエスは食卓に着かれ、使徒たちもイエスといっしょに席に着い た。

15 イエスは言われた。「わたしは、苦しみを受ける前に、あなたがたといっしょに、こ の過越の食事をすることをどんなに望んでいたことか。

16 あなたがたに言いますが、過越が神の国において成就するまでは、わたしはもはや二 度と過越の食事をすることはありません。」

17 そしてイエスは、杯を取り、感謝をささげて後、言われた。「これを取って、互い に分けて飲みなさい。

18 あなたがたに言いますが、今から、神の国が来る時までは、わたしはもはや、ぶどう の実で造った物を飲むことはありません。」

19 それから、パンを取り、感謝をささげてから、裂いて、弟子たちに与えて言われた。 「これは、あなたがたのために与える、わたしのからだです。わたしを覚えてこれを行な いなさい。」

20 食事の後、杯も同じようにして言われた。「この杯は、あなたがたのために流される わたしの血による新しい契約です。

21 しかし、見なさい。わたしを裏切る者の手が、わたしとともに食卓にあります。

22 人の子は、定められたとおりに去って行きます。しかし、人の子を裏切るような人 間はのろわれます。」

23 そこで弟子たちは、そんなことをしようとしている者は、いったいこの中のだれなの かと、互いに議論をし始めた。

24 また、彼らの間には、この中でだれが一番偉いだろうかという論議も起こった。

25 すると、イエスは彼らに言われた。「異邦人の王たちは人々を支配し、また人々 の上に権威を持つ者は守護者と呼ばれています。

26 だが、あなたがたは、それではいけません。あなたがたの間で一番偉い人は一番 年の若い者のようになりなさい。また、治める人は仕える人のようでありなさい。

27 食卓に着く人と給仕する者と、どちらが偉いでしょう。むろん、食卓に着く人でしょ う。しかしわたしは、あなたがたのうちにあって給仕する者のようにしています。

28 けれども、あなたがたこそ、わたしのさまざまの試練の時にも、わたしについて来て くれた人たちです。

29 わたしの父がわたしに王権を与えてくださったように、わたしもあなたがたに王 権を与えます。

30 それであなたがたは、わたしの国でわたしの食卓に着いて食事をし、王座に着い て、イスラエルの十二の部族をさばくのです。

31 シモン、シモン。見なさい。サタンが、あなたがたを麦のようにふるいにかけること を願って聞き届けられました。

32 しかし、わたしは、あなたの信仰がなくならないように、あなたのために祈りまし た。だからあなたは、立ち直ったら、兄弟たちを力づけてやりなさい。」

33 シモンはイエスに言った。「主よ。ごいっしょになら、牢であろうと、死であろう と、覚悟はできております。」

34 しかし、イエスは言われた。「ペテロ。あなたに言いますが、きょう鶏が鳴くまで に、あなたは三度、わたしを知らないと言います。」

35 それから、弟子たちに言われた。「わたしがあなたがたを、財布も旅行袋もくつ も持たせずに旅に出したとき、何か足りない物がありましたか。」彼らは言った。「いい え。何もありませんでした。」

36 そこで言われた。「しかし、今は、財布のある者は財布を持ち、同じく袋を持ち、 剣のない者は着物を売って剣を買いなさい。

37 あなたがたに言いますが、『彼は罪人たちの中に数えられた。』と書いてあるこのこ とが、わたしに必ず実現するのです。わたしにかかわることは実現します。」

38 彼らは言った。「主よ。このとおり、ここに剣が二振りあります。」イエスは彼ら に、「それで十分。」と言われた。

39 それからイエスは出て、いつものようにオリーブ山に行かれ、弟子たちも従った。

40 いつもの場所に着いたとき、イエスは彼らに、「誘惑に陥らないように祈っていなさ い。」と言われた。

41 そしてご自分は、弟子たちから石を投げて届くほどの所に離れて、ひざまずいて、こ う祈られた。

42 「父よ。みこころならば、この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたし の願いではなく、みこころのとおりにしてください。」

43 すると、御使いが天からイエスに現われて、イエスを力づけた。

44 イエスは、苦しみもだえて、いよいよ切に祈られた。汗が血のしずくのよう に地に落ちた。

45 イエスは祈り終わって立ち上がり、弟子たちのところに来て見ると、彼らは悲しみ の果てに、眠り込んでしまっていた。

46 それで、彼らに言われた。「なぜ、眠っているのか。起きて、誘惑に陥らないよう に祈っていなさい。」

47 イエスがまだ話をしておられるとき、群衆がやって来た。十二弟子のひとりで、ユダ という者が、先頭に立っていた。ユダはイエスに口づけしようとして、みもとに近づい た。

48 だが、イエスは彼に、「ユダ。口づけで、人の子を裏切ろうとするのか。」と言われ た。

49 イエスの回りにいた者たちは、事の成り行きを見て、「主よ。剣で撃ちましょう か。」と言った。

50 そしてそのうちのある者が、大祭司のしもべに撃ってかかり、その右の耳を切り落と した。

51 するとイエスは、「やめなさい。それまで。」と言われた。そして、耳にさわっ て彼を直してやられた。

52 そして押しかけて来た祭司長、宮の守衛長、長老たちに言われた。「まるで強盗にで も向かうように、剣や棒を持ってやって来たのですか。

53 あなたがたは、わたしが毎日宮でいっしょにいる間は、わたしに手出しもしなかっ た。しかし、今はあなたがたの時です。暗やみの力です。」

54 彼らはイエスを捕え、引いて行って、大祭司の家に連れて来た。ペテロは、遠く離れ てついて行った。

55 彼らは中庭の真中に火をたいて、みなすわり込んだので、ペテロも中に混じって腰を おろした。

56 すると、女中が、火あかりの中にペテロのすわっているのを見つけ、まじまじ と見て言った。「この人も、イエスといっしょにいました。」

57 ところが、ペテロはそれを打ち消して、「いいえ、私はあの人を知りませ ん。」と言った。

58 しばらくして、ほかの男が彼を見て、「あなたも、彼らの仲間だ。」と言った。しか し、ペテロは、「いや、違います。」と言った。

59 それから一時間ほどたつと、また別の男が、「確かにこの人も彼といっしょだっ た。この人もガリラヤ人だから。」と言い張った。

60 しかしペテロは、「あなたの言うことは私にはわかりません。」と言った。それとい っしょに、彼がまだ言い終えないうちに、鶏が鳴いた。

61 主が振り向いてペテロを見つめられた。ペテロは、「きょう、鶏が鳴くまでに、あな たは、三度わたしを知らないと言う。」と言われた主のおことばを思い出した。

62 彼は、外に出て、激しく泣いた。

63 さて、イエスの監視人どもは、イエスをからかい、むちでたたいた。

64 そして目隠しをして、「言い当ててみろ。今たたいたのはだれか。」と聞いたりし た。

65 また、そのほかさまざまな悪口をイエスに浴びせた。

66 夜が明けると、民の長老会、それに祭司長、律法学者たちが、集まった。彼らはイエ

スを議会に連れ出し、

67 こう言った。「あなたがキリストなら、そうだと言いなさい。」しかしイエスは言わ

れた。「わたしが言っても、あなたがたは決して信じないでしょうし、

68 わたしが尋ねても、あなたがたは決して答えないでしょう。

69 しかし今から後、人の子は、神の大能の右の座に着きます。」

70 彼らはみなで言った。「ではあなたは神の子ですか。」すると、イエスは彼らに「あ なたがたの言うとおり、わたしはそれです。」と言われた。

71 すると彼らは「これでもまだ証人が必要でしょうか。私たち自身が彼の口から直接そ れを聞いたのだから。」と言った。

1 そこで、彼らは全員が立ち上がり、イエスをピラトのもとに連れて行った。

2 そしてイエスについて訴え始めた。彼らは言った。「この人はわが国民を惑わし、カ イザルに税金を納めることを禁じ、自分は王キリストだと言っていることがわかりまし た。」

3 するとピラトはイエスに、「あなたは、ユダヤ人の王ですか。」と尋ねた。イエス は答えて、「そのとおりです。」と言われた。

4 ピラトは祭司長たちや群衆に、「この人には何の罪も見つからない。」と言った。

5 しかし彼らはあくまで言い張って、「この人は、ガリラヤからここまで、ユダヤ全 土で教えながら、この民を扇動しているのです。」と言った。

6 それを聞いたピラトは、この人はガリラヤ人かと尋ねて、

7 ヘロデの支配下にあるとわかると、イエスをヘロデのところに送った。ヘロデもその ころエルサレムにいたからである。

8 ヘロデはイエスを見ると非常に喜んだ。ずっと前からイエスのことを聞いていたの で、イエスに会いたいと思っていたし、イエスの行なう何かの奇蹟を見たいと考えていた からである。

9 それで、いろいろと質問したが、イエスは彼に何もお答えにならなかった。

10 祭司長たちと律法学者たちは立って、イエスを激しく訴えていた。

11 ヘロデは、自分の兵士たちといっしょにイエスを侮辱したり嘲弄したりしたあげ く、はでな衣を着せて、ピラトに送り返した。

12 この日、ヘロデとピラトは仲よくなった。それまでは互いに敵対していたのである。

13 ピラトは祭司長たちと指導者たちと民衆とを呼び集め、

14 こう言った。「あなたがたは、この人を、民衆を惑わす者として、私のところに連れ て来たけれども、私があなたがたの前で取り調べたところ、あなたがたが訴えているよう な罪は別に何も見つかりません。

15 ヘロデとても同じです。彼は私たちにこの人を送り返しました。見なさい。こ の人は、死罪に当たることは、何一つしていません。

16 だから私は、懲らしめたうえで、釈放します。」 17-18 しかし彼らは、声をそろえて叫んだ。「この人を除け。バラバを釈放しろ。」

19 バラバとは、都に起こった暴動と人殺しのかどで、牢にはいっていた者である。

20 ピラトは、イエスを釈放しようと思って、彼らに、もう一度呼びかけた。

21 しかし、彼らは叫び続けて、「十字架だ。十字架につけろ。」と言った。

22 しかしピラトは三度目に彼らにこう言った。「あの人がどんな悪いことをしたという のか。あの人には、死に当たる罪は、何も見つかりません。だから私は、懲らしめたうえ で、釈放します。」

23 ところが、彼らはあくまで主張し続け、十字架につけるよう大声で要求した。そして ついにその声が勝った。

24 ピラトは、彼らの要求どおりにすることを宣告した。

25 すなわち、暴動と人殺しのかどで牢にはいっていた男を願いどおりに釈放し、イエス を彼らに引き渡して好きなようにさせた。

26 彼らは、イエスを引いて行く途中、いなかから出て来たシモンというクレネ人をつか まえ、この人に十字架を負わせてイエスのうしろから運ばせた。

27 大ぜいの民衆やイエスのことを嘆き悲しむ女たちの群れが、イエスのあとについ て行った。

28 しかしイエスは、女たちのほうに向いて、こう言われた。「エルサレムの娘たち。わ たしのことで泣いてはいけない。むしろ自分自身と、自分の子どもたちのことのため に泣きなさい。

29 なぜなら人々が、『不妊の女、子を産んだことのない胎、飲ませたことのない乳 房は、幸いだ。』と言う日が来るのですから。

30 そのとき、人々は山に向かって、『われわれの上に倒れかかってくれ。』と言い、 丘に向かって、『われわれをおおってくれ。』と言い始めます。

31 彼らが生木にこのようなことをするのなら、枯れ木には、いったい、何が起こるでし ょう。」

32 ほかにもふたりの犯罪人が、イエスとともに死刑にされるために、引かれて行った。

33 「どくろ」と呼ばれている所に来ると、そこで彼らは、イエスと犯罪人とを十字架に つけた。犯罪人のひとりは右に、ひとりは左に。

34 そのとき、イエスはこう言われた。「父よ。彼らをお赦しください。彼らは、何をし ているのか自分でわからないのです。」彼らは、くじを引いて、イエスの着物を分けた。

35 民衆はそばに立ってながめていた。指導者たちもあざ笑って言った。「あれは他 人を救った。もし、神のキリストで、選ばれた者なら、自分を救ってみろ。」

36 兵士たちもイエスをあざけり、そばに寄って来て、酸いぶどう酒を差し出し、

37 「ユダヤ人の王なら、自分を救え。」と言った。

38 「これはユダヤ人の王。」と書いた札もイエスの頭上に掲げてあった。

39 十字架にかけられていた犯罪人のひとりはイエスに悪口を言い、「あなたはキリスト ではないか。自分と私たちを救え。」と言った。

40 ところが、もうひとりのほうが答えて、彼をたしなめて言った。「おまえは神を も恐れないのか。おまえも同じ刑罰を受けているではないか。

41 われわれは、自分のしたことの報いを受けているのだからあたりまえだ。だがこ の方は、悪いことは何もしなかったのだ。」

42 そして言った。「イエスさま。あなたの御国の位にお着きになるときには、 私を思い出してください。」

43 イエスは、彼に言われた。「まことに、あなたに告げます。あなたはきょう、わたし とともにパラダイスにいます。」

44 そのときすでに十二時ごろになっていたが、全地が暗くなって、三時まで続いた。

45 太陽は光を失っていた。また、神殿の幕は真二つに裂けた。

46 イエスは大声で叫んで、言われた。「父よ。わが霊を御手にゆだねます。」こう言っ て、息を引き取られた。

47 この出来事を見た百人隊長は、神をほめたたえ、「ほんとうに、この人は正しい方で あった。」と言った。

48 また、この光景を見に集まっていた群衆もみな、こういういろいろの出来事を見たの で、胸をたたいて悲しみながら帰った。

49 しかし、イエスの知人たちと、ガリラヤからイエスについて来ていた女たちとはみ な、遠く離れて立ち、これらのことを見ていた。

50 さてここに、ヨセフという、議員のひとりで、りっぱな、正しい人がいた。

51 この人は議員たちの計画や行動には同意しなかった。彼は、アリマタヤというユダ ヤ人の町の人で、神の国を待ち望んでいた。

52 この人が、ピラトのところに行って、イエスのからだの下げ渡しを願った。

53 それから、イエスを取り降ろして、亜麻布で包み、そして、まだだれをも葬ったこと のない、岩に掘られた墓にイエスを納めた。

54 この日は準備の日で、もう安息日が始まろうとしていた。

55 ガリラヤからイエスといっしょに出て来た女たちは、ヨセフについて行って、 墓と、イエスのからだの納められる様子を見届けた。

56 そして、戻って来て、香料と香油を用意した。

安息日には、戒めに従って、休んだが、

1 週の初めの日の明け方早く、女たちは、準備しておいた香料を持って墓に着いた。

2 見ると、石が墓からわきにころがしてあった。

3 はいって見ると、主イエスのからだはなかった。

4 そのため女たちが途方にくれていると、見よ、まばゆいばかりの衣を着たふたり の人が、女たちの近くに来た。

5 恐ろしくなって、地面に顔を伏せていると、その人たちはこう言った。「あなたがた は、なぜ生きている方を死人の中で捜すのですか。

6 ここにはおられません。よみがえられたのです。まだガリラヤにおられたこ ろ、お話しになったことを思い出しなさい。

7 人の子は必ず罪人らの手に引き渡され、十字架につけられ、三日目によみがえらなけ ればならない、と言われたでしょう。」

8 女たちはイエスのみことばを思い出した。

9 そして、墓から戻って、十一弟子とそのほかの人たち全部に、一部始終を報告した。

10 この女たちは、マグダラのマリヤとヨハンナとヤコブの母マリヤとであった。彼女た ちといっしょにいたほかの女たちも、このことを使徒たちに話した。

11 ところが使徒たちにはこの話はたわごとと思われたので、彼らは女たちを信用しなか った。

12 [しかしペテロは、立ち上がると走って墓へ行き、かがんでのぞき込んだところ、亜

麻布だけがあった。それで、この出来事に驚いて家に帰った。]

13 ちょうどこの日、ふたりの弟子が、エルサレムから十一キロメートル余り離れたエマ オという村に行く途中であった。

14 そして、ふたりでこのいっさいの出来事について話し合っていた。

15 話し合ったり、論じ合ったりしているうちに、イエスご自身が近づいて、彼らととも に道を歩いておられた。

16 しかしふたりの目はさえぎられていて、イエスだとはわからなかった。

17 イエスは彼らに言われた。「歩きながらふたりで話し合っているその話は、何のこと ですか。」すると、ふたりは暗い顔つきになって、立ち止まった。

18 クレオパというほうが答えて言った。「エルサレムにいながら、近ごろそこで起こっ た事を、あなただけが知らなかったのですか。」

19 イエスが、「どんな事ですか。」と聞かれると、ふたりは答えた。「ナザレ人イエス のことです。この方は、神とすべての民の前で、行ないにもことばにも力のある預言者で した。

20 それなのに、私たちの祭司長や指導者たちは、この方を引き渡して、死刑に定め、十 字架につけたのです。

21 しかし私たちは、この方こそイスラエルを贖ってくださるはずだ、と望みをかけてい ました。事実、そればかりでなく、その事があってから三日目になりますが、

22 また仲間の女たちが私たちを驚かせました。その女たちは朝早く墓に行ってみました

が、

23 イエスのからだが見当たらないので、戻って来ました。そして御使いたちの幻を見た が、御使いたちがイエスは生きておられると告げた、と言うのです。

24 それで、仲間の何人かが墓に行ってみたのですが、はたして女たちの言ったとおり で、イエスさまは見当たらなかった、というのです。」

25 するとイエスは言われた。「ああ、愚かな人たち。預言者たちの言ったすべてを信じ ない、心の鈍い人たち。

26 キリストは、必ず、そのような苦しみを受けて、それから、彼の栄光にはいるはずで はなかったのですか。」

27 それから、イエスは、モーセおよびすべての預言者から始めて、聖書全 体の中で、ご自分について書いてある事がらを彼らに説き明かされた。

28 彼らは目的の村に近づいたが、イエスはまだ先へ行きそうなご様子であった。

29 それで、彼らが、「いっしょにお泊まりください。そろそろ夕刻になりますし、日も おおかた傾きましたから。」と言って無理に願ったので、イエスは彼らといっしょに泊ま るために中にはいられた。

30 彼らとともに食卓に着かれると、イエスはパンを取って祝福し、裂いて彼らに渡され た。

31 それで、彼らの目が開かれ、イエスだとわかった。するとイエスは、彼らには見えな くなった。

32 そこでふたりは話し合った。「道々お話しになっている間も、聖書を説明してくださ った間も、私たちの心はうちに燃えていたではないか。」

33 すぐさまふたりは立って、エルサレムに戻ってみると、十一使徒とその仲間が集まっ

て、

34 「ほんとうに主はよみがえって、シモンにお姿を現わされた。」と言っていた。

35 彼らも、道であったいろいろなことや、パンを裂かれたときにイエスだとわかった次 第を話した。

36 これらのことを話している間に、イエスご自身が彼らの真中に立たれた。

37 彼らは驚き恐れて、霊を見ているのだと思った。

38 すると、イエスは言われた。「なぜ取り乱しているのですか。どうして心に疑い を起こすのですか。

39 わたしの手やわたしの足を見なさい。まさしくわたしです。わたしにさわって、よ く見なさい。霊ならこんな肉や骨はありません。わたしは持っています。」 40-41 それでも、彼らは、うれしさのあまりまだ信じられず、不思議がっているので、イ エスは、「ここに何か食べ物がありますか。」と言われた。

42 それで、焼いた魚を一切れ差し上げると、

43 イエスは、彼らの前で、それを取って召し上がった。

44 さて、そこでイエスは言われた。「わたしがまだあなたがたといっしょにいたこ ろ、あなたがたに話したことばはこうです。わたしについてモーセの律法と預言者と詩 篇とに書いてあることは、必ず全部成就するということでした。」

45 そこで、イエスは、聖書を悟らせるために彼らの心を開いて、

46 こう言われた。「次のように書いてあります。キリストは苦しみを受け、三日目に死

人の中からよみがえり、

47 その名によって、罪の赦しを得させる悔い改めが、エルサレムから始まってあらゆ る国の人々に宣べ伝えられる。

48 あなたがたは、これらのことの証人です。

49 さあ、わたしは、わたしの父の約束してくださったものをあなたがたに送ります。あ なたがたは、いと高き所から力を着せられるまでは、都にとどまっていなさい。」

50 それから、イエスは、彼らをベタニヤまで連れて行き、手を上げて祝福された。

51 そして祝福しながら、彼らから離れて行かれた。

52 彼らは、非常な喜びを抱いてエルサレムに帰り、

53 いつも宮にいて神をほめたたえていた。