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新改訳新約聖書 1965

マルコの福音書 14

1 さて、過越の祭りと種なしパンの祝いが二日後に迫っていたので、祭司長、律法学 者たちは、どうしたらイエスをだまして捕え、殺すことができるだろうか、とけんめいで あった。

2 彼らは、「祭りの間はいけない。民衆の騒ぎが起こるといけないから。」と話してい た。

3 イエスがベタニヤで、らい病人シモンの家におられたとき、食卓に着いておられる と、ひとりの女が、純粋で、非常に高価なナルド油のはいった石膏のつぼを持っ て来て、そのつぼを割り、イエスの頭に注いだ。

4 すると、何人かの者が憤慨して互いに言った。「何のために、香油をこんなにむだに したのか。

5 この香油なら、三百デナリ以上に売れて、貧乏な人たちに施しができたのに。」そう して、その女をきびしく責めた。

6 すると、イエスは言われた。「そのままにしておきなさい。なぜこの人を困らせるの ですか。わたしのために、りっぱなことをしてくれたのです。

7 貧しい人たちは、いつもあなたがたといっしょにいます。それで、あなたがたがした いときは、いつでも彼らに良いことをしてやれます。しかし、わたしは、いつもあなたが たといっしょにいるわけではありません。

8 この女は、自分にできることをしたのです。埋葬の用意にと、わたしのからだに、 前もって油を塗ってくれたのです。

9 まことに、あなたがたに告げます。世界中のどこででも、福音が宣べ伝えられる所な ら、この人のした事も語られて、この人の記念となるでしょう。」

10 ところで、イスカリオテ・ユダは、十二弟子のひとりであるが、イエスを売ろうとし て祭司長たちのところへ出向いて行った。

11 彼らはこれを聞いて喜んで、金をやろうと約束した。そこでユダは、どうしたら、う まいぐあいにイエスを引き渡せるかと、ねらっていた。

12 種なしパンの祝いの第一日、すなわち、過越の小羊をほふる日に、弟子たちはイエス に言った。「過越の食事をなさるのに、私たちは、どこへ行って用意をしましょうか。」

13 そこで、イエスは、弟子のうちふたりを送って、こう言われた。「都にはいりなさ い。そうすれば、水がめを運んでいる男に会うから、その人について行きなさい。

14 そして、その人がはいって行く家の主人に、『弟子たちといっしょに過越の食事をす る、わたしの客間はどこか、と先生が言っておられる。』と言いなさい。

15 するとその主人が自分で、席が整って用意のできた二階の広間を見せてくれます。そ こでわたしたちのために用意をしなさい。」

16 弟子たちが出かけて行って、都にはいると、まさしくイエスの言われたとおりであっ た。それで、彼らはそこで過越の食事の用意をした。

17 夕方になって、イエスは十二弟子といっしょにそこに来られた。

18 そして、みなが席に着いて、食事をしているとき、イエスは言われた。「まこと に、あなたがたに告げます。あなたがたのうちのひとりで、わたしといっしょに食事をし ている者が、わたしを裏切ります。」

19 弟子たちは悲しくなって、「まさか私ではないでしょう。」とかわるがわるイエス に言いだした。

20 イエスは言われた。「この十二人の中のひとりで、わたしといっしょに、同じ鉢にパ ンを浸している者です。

21 確かに、人の子は、自分について書いてあるとおりに、去って行きます。しかし、 人の子を裏切るような人間はのろわれます。そういう人は生まれなかったほうがよかった のです。」

22 それから、みなが食事をしているとき、イエスはパンを取り、祝福して後、これ を裂き、彼らに与えて言われた。「取りなさい。これはわたしのからだです。」

23 また、杯を取り、感謝をささげて後、彼らに与えられた。彼らはみなその杯から飲ん だ。

24 イエスは彼らに言われた。「これはわたしの契約の血です。多くの人のために流され るものです。

25 まことに、あなたがたに告げます。神の国で新しく飲むその日までは、わたしはもは や、ぶどうの実で造った物を飲むことはありません。」

26 そして、賛美の歌を歌ってから、みなでオリーブ山へ出かけて行った。

27 イエスは、弟子たちに言われた。「あなたがたはみな、つまずきます。『わたしが羊 飼いを打つ。すると、羊は散り散りになる。』と書いてありますから。

28 しかしわたしは、よみがえってから、あなたがたより先に、ガリラヤへ行きます。」

29 すると、ペテロがイエスに言った。「たとい全部の者がつまずいても、私はつまずき ません。」

30 イエスは彼に言われた。「まことに、あなたに告げます。あなたは、きょう、今 夜、鶏が二度鳴く前に、わたしを知らないと三度言います。」

31 ペテロは力を込めて言い張った。「たとい、ごいっしょに死ななければならないとし ても、私は、あなたを知らないなどとは決して申しません。」みなの者もそう言った。

32 ゲツセマネという所に来て、イエスは弟子たちに言われた。「わたしが祈る間、ここ にすわっていなさい。」

33 そして、ペテロ、ヤコブ、ヨハネをいっしょに連れて行かれた。イエスは深く恐れも だえ始められた。

34 そして彼らに言われた。「わたしは悲しみのあまり死ぬほどです。ここを離れない で、目をさましていなさい。」

35 それから、イエスは少し進んで行って、地面にひれ伏し、もしできることなら、こ

の時が自分から過ぎ去るようにと祈り、

36 またこう言われた。「アバ、父よ。あなたにおできにならないことはありません。ど うぞ、この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしの願うことではなく、あ なたのみこころのままを、なさってください。」

37 それから、イエスは戻って来て、彼らの眠っているのを見つけ、ペテロに言われた。 「シモン。眠っているのか。一時間でも目をさましていることができなかったのか。

38 誘惑に陥らないように、目をさまして、祈り続けなさい。心は燃えていても、肉 体は弱いのです。」

39 イエスは再び離れて行き、前と同じことばで祈られた。

40 そして、また戻って来て、ご覧になると、彼らは眠っていた。ひどく眠けがさしてい たのである。彼らは、イエスにどう言ってよいか、わからなかった。

41 イエスは三度目に来て、彼らに言われた。「まだ眠って休んでいるのですか。もう十 分です。時が来ました。見なさい。人の子は罪人たちの手に渡されます。

42 立ちなさい。さあ、行くのです。見なさい。わたしを裏切る者が近づきました。」

43 そしてすぐ、イエスがまだ話しておられるうちに、十二弟子のひとりのユダが現われ た。剣や棒を手にした群衆もいっしょであった。群衆はみな、祭司長、律法学者、長老た ちから差し向けられたものであった。

44 イエスを裏切る者は、彼らと前もって次のような合図を決めておいた。「私が口づけ をするのが、その人だ。その人をつかまえて、しっかりと引いて行くのだ。」

45 それで、彼はやって来るとすぐに、イエスに近寄って、「先生。」と言って、口づけ した。

46 すると人々は、イエスに手をかけて捕えた。

47 そのとき、イエスのそばに立っていたひとりが、剣を抜いて大祭司のしもべに撃ちか かり、その耳を切り落とした。

48 イエスは彼らに向かって言われた。「まるで強盗にでも向かうように、剣や棒を持っ てわたしを捕えに来たのですか。

49 わたしは毎日、宮であなたがたといっしょにいて、教えていたのに、あなたがた は、わたしを捕えなかったのです。しかし、こうなったのは聖書のことばが実現するため です。」

50 すると、みながイエスを見捨てて、逃げてしまった。

51 ある青年が、素はだに亜麻布を一枚まとったままで、イエスについて行ったところ、 人々は彼を捕えようとした。

52 すると、彼は亜麻布を脱ぎ捨てて、はだかで逃げた。

53 彼らがイエスを大祭司のところに連れて行くと、祭司長、長老、律法学者たちがみ な、集まって来た。

54 ペテロは、遠くからイエスのあとをつけながら、大祭司の庭の中まではいって行っ た。そして、役人たちといっしょにすわって、火にあたっていた。

55 さて、祭司長たちと全議会は、イエスを死刑にするために、イエスを訴える証拠をつ かもうと努めたが、何も見つからなかった。

56 イエスに対する偽証をした者は多かったが、一致しなかったのである。

57 すると、数人が立ち上がって、イエスに対する偽証をして、次のように言った。

58 「私たちは、この人が『わたしは手で造られたこの神殿をこわして、三日のうちに、 手で造られない別の神殿を造ってみせる。』と言うのを聞きました。」

59 しかし、この点でも証言は一致しなかった。

60 そこで大祭司が立ち上がり、真中に進み出てイエスに尋ねて言った。「何も答えない のですか。この人たちが、あなたに不利な証言をしていますが、これはどうなのです か。」

61 しかし、イエスは黙ったままで、何もお答えにならなかった。大祭司は、さらにイエ スに尋ねて言った。「あなたは、ほむべき方の子、キリストですか。」

62 そこでイエスは言われた。「わたしは、それです。人の子が、力あ る方の右の座に着き、天の雲に乗って来るのを、あなたがたは見るはずです。」

63 すると、大祭司は、自分の衣を引き裂いて言った。「これでもまだ、証人が必要でし ょうか。

64 あなたがたは、神をけがすこのことばを聞いたのです。どう考えますか。」すると、 彼らは全員で、イエスには死刑に当たる罪があると決めた。

65 そうして、ある人々は、イエスにつばきをかけ、御顔をおおい、こぶしでなぐりつ け、「言い当ててみろ。」などと言ったりし始めた。また、役人たちは、イエス を受け取って、平手で打った。

66 ペテロが下の庭にいると、大祭司の女中のひとりが来て、

67 ペテロが火にあたっているのを見かけ、彼をじっと見つめて、言った。「あなた も、あのナザレ人、あのイエスといっしょにいましたね。」

68 しかし、ペテロはそれを打ち消して、「何を言っているのか、わからない。見当もつ かない。」と言って、出口のほうへと出て行った。

69 すると女中は、ペテロを見て、そばに立っていた人たちに、また、「この人はあの仲 間です。」と言いだした。

70 しかし、ペテロは再び打ち消した。しばらくすると、そばに立っていたその人たち が、またペテロに言った。「確かに、あなたはあの仲間だ。ガリラヤ人なのだから。」

71 しかし、彼はのろいをかけて誓い始め、「私は、あなたがたの話しているそ の人を知りません。」と言った。

72 するとすぐに、鶏が、二度目に鳴いた。そこでペテロは、「鶏が二度鳴く前に、あな たは、わたしを知らないと三度言います。」というイエスのおことばを思い出した。それ に思い当たったとき、彼は泣き出した。